通信の世界では、これまでのルールベースの自動化を超えたネットワーク運用の高度化にAIを活用して取り組んでいる。最終的に目指すのは、ネットワークが自ら状況を判断し、構成変更や最適化を行う完全自律型ネットワークの実現だ。
そこに至るには、人間のインテント(意図)に基づき、ネットワークが自律的に適切な構成・運用を行う「インテントベースドネットワーク」を目指す必要がある。OSS/BSSソリューションをグローバルに展開するコマーチの日本法人でSenior Telco Consultantを務める小出泰雄氏は、「インテントベースドネットワークでは、AIが人間の意図を理解して実行する必要があります。そのためには、AIエージェントとデジタルツインが欠かせません」と語る。
コマーチ(株) Senior Telco Consultant 小出 泰雄氏
AIエージェントの「チーム」が意図を理解しネットワーク運用
インテントベースドネットワークとは、オペレーターが自然言語で入力したビジネス要件やサービス要件といったインテントに基づいて、ネットワークが自律的に構成・運用される仕組みだ。入力されたインテントを、システムが設定(コンフィグレーション)やポリシーに翻訳し、整合性を検証したうえで自動的に適用する。その後はネットワークの状態を継続的に監視し、必要に応じて構成を動的に調整していく。
こうした自律制御を支えているのがAIエージェントだ。
コマーチのソリューションでは、様々な専門性を持つ複数のAIエージェントがタスクを分担しチームを組成し、連携して対応にあたる。図表1は、障害発生時に稼働するAIエージェントと、各エージェントが行う処理や参照する情報源をまとめたものだ。AIエージェントは各自の判断に基づき関連情報を取得し、必要な処理を実行する。処理後はチケットの更新や関係者へのメール通知など、タスクのクローズも自動で行う。
図表1 複数AIエージェントの連携による障害対応の自動化
AIエージェントは観察・推論・実行の機能を備えているだけでなく、他のエージェントに処理を委任することもある。そのため、どのような構成でチームを組むかは、解決すべき課題やインテントの内容に応じて変化する。
各エージェントには大規模言語モデル(LLM)が組み込まれており、自然言語での処理や推論を効率よく行うことが可能だ。LLMはコマーチが推奨するモデルに限らず、ユーザーが希望するモデルに置き換えることもできるという。