工場やプラント、発電所など様々な現場でローカル5Gの活用が広がるなか、各ベンダーが提供するローカル5Gソリューションの多様化が進展している。各社が独自の強みや特徴を打ち出す一方で、ローカル5Gに関する知見が少ないユーザー企業にとっては、どの製品が自社に最適なのかを見極めるのが難しくなってきている。
ローカル5Gの導入を検討する企業は、何を基準に製品を選べばいいのか──。最新のローカル5Gソリューションを紹介しながら、選定時のポイントについて見ていこう。
クラウドとオンプレはどっちがいい?
多くの企業にとって、最大の関心事の1つはコストだろう。制度化当初に比べればコストはだいぶ下がったとはいえ、慎重にトータルでかかるコストを見極める必要がある。
初期費用を抑えたいユーザー企業に向くのは、サブスク型のローカル5Gソリューションだ。その代表例が、NTT東日本が提供するマネージド・ローカル5Gサービス「ギガらく5G」である。5Gコアは同社のデータセンターからVPNを通じてクラウド型で提供され、月額27万9000円~(税抜、以下同じ)という導入しやすい料金体系で利用できる。
今年3月に登場したNTTコミュニケーションズ(NTT Com)の「ローカル5Gサービス TypeD」は、最小構成で月額50万円から利用可能だ。ローカル5Gシステムを構成するCU/DU(制御部)やUPF(ユーザープレーン機能)、5GコアなどをNTTドコモのネットワークと共用することで、コストダウンを実現させている。また、敷地内に設置が必要な設備はRU(無線部)とアンテナのみで、従来と比べて設置スペースを約9割削減できるという。
クラウド型は、初期費用や運用負荷を軽減できるという利点があるが、KDDIエンジニアリング 新規事業推進部 副部長の大石泰史氏によれば、「工場やプラントには高品質な通信が求められ、セキュリティをより重要視する企業が多い」ため、オンプレミス型が選ばれるケースも少なくないそうだ。導入目的やコスト、運用体制などを踏まえたうえで、自社に適した構成を選ぶことが重要になるだろう。
こうした多様なニーズに対応するため、ベンダー各社もクラウド型・オンプレ型の両方に対応した製品を展開している。三井情報では、5Gコアなどをクラウド型で提供するシスコシステムズの「Cisco Private 5G」と、アイルランドのDruid Software社が提供するオンプレ型の「Raemis Private CoreNetwork」という2種類を用意する。KDDIエンジニアリングも、「国内外のパートナー企業とタッグを組み、最適な機器をお客様に提供できる」と大石氏はアピールする。
図表 ローカル5Gソリューション/製品(一例、記載料金は税抜)