(第1回はこちら)
日本のICT産業がM2Mの世界で躍進を目指すうえで、海外の有力プレーヤーにおける取り組み状況を把握しておくことは重要である。彼らと同じような提供価値、同じような戦い方を志向していては、グローバルレベルの戦いの場で優位なポジションを確立させることはできないからだ。
ここでポイントとなるのは、どんなサービスが展開されているのかという「What論」ではなく、サービスの実現を可能足らしめるビジネスモデルとしての「How論」だ。
各国を概観すると、テレマティクス、ヘルスケア、スマートグリッド/スマートシティといった移動体通信と相性の良い世界で各種M2M関連サービスが展開されているが、具体的な提供価値そのものに関して排他的な差別化の障壁を確立させることはほぼ不可能だ。
どこかの国で立ち上がったサービスは、時を隔てず他市場に伝播することとなる。M2M関連サービスのサプライヤーであるICTプレーヤーやデマンドサイドの各産業界そのものがグローバルレベルでビジネスの拡大を志向しているからだ。
故に「What論」としての学びの鮮度/寿命は、短いと言わざるを得ない。学ぶべきは、なぜサービスが受容され、早期に立ち上がるに至ったかのビジネスモデル的側面に基づくKFS(Key Factor for Success)であろう。
M2Mの市場特性
通信事業者、ネットワークベンダー、システムインテグレーター等はM2Mの実現/導入でもたらされる近未来の効果・効用の素晴らしさを全面的に押し出しながら、積極的なサービス開発/展開を進めている。M2Mはあくまでも「Machine to Machine Communication」であり、それ自体は何かを実現するための“手段”に過ぎない。“手段”の先にある具体的な効果・効用が明確にならない限り、本当の意味で市場が立ち上がるのは難しい。
また、どの主要プレーヤーも、スマート化社会の到来を標榜し、ありとあらゆる端末がネットワークでつながれる世界をデザインしており、主張内容で各プレーヤーの出自の違いを認識することはできない。例えば図表4はエリクソンのM2Mへの取り組みの概要を示したものだが、ネットワークに強みを持ち多国展開しているメガキャリアも、業界別ソリューションに強みを持つアクセンチュアやIBMのようなプレーヤーも、同じようなサービスラインナップを整備しており、誰にお願いしても同じような効果・効用を得られるような気にさせられる。
図表4 エリクソンにおけるM2Mへの取り組み状況 |
さらに、M2Mの先にはInternet of Things/Big Dataの世界が待ち受けており、収集された膨大な情報をベースに一段と高度化された新しい情報サービスを提供する世界が到来するといった将来シナリオも、各社が描く共通的な青写真である。
しかし、M2Mに関連する具体的な課題や期待に対応できる現実的かつ即効性の高い仕組みが提供されない限り、近未来への道程は不明確なままとなる。
そこで今注目されているのが、M2Mの世界に特化したM2M-PF(プラットフォーム)プレーヤーの存在だ。その名の通り、M2M関連サービスの実現に向けて必要となる共通機能をPF化することでサービスの早期立ち上げを支援する役割を担っており、今やM2Mの実現において欠かせない存在となっている。