ライムライト・ネットワークス・ジャパンは2011年11月30日、同月16日に発表したSaaS型のコンテンツ配信プラットフォームと、今後の日本・アジア市場向けの戦略についてメディア向けの説明会を行った。
日本代表取締役兼アジア・パシフィックVPのアンディー・クラーク氏 |
同社は、大規模・大容量ファイル向けのコンテンツ配信サービス(CDN:Content Delivery Network)を提供しており、今回、SaaS製品を大幅に拡張。日本代表取締役兼アジア・パシフィックVPのアンディー・クラーク氏は、モバイル端末向けの配信サービスやコンテンツ管理・収益化、広告挿入等のソリューション提供により、オンラインコンテンツの消費拡大、スマートフォンやタブレット上でのリッチコンテンツの活用に対応していく考えを示した。
ライムライト・ネットワークス・ジャパンが提供するCDNの最大の特徴は、「プライベートなグローバルIPネットワークを持っていること」とクラーク氏は話す。また、世界に28箇所のデータセンターにクラウドストレージを持ち、独自のブラウザベースのアクセラレーション技術等を裏付けとした高パフォーマンスなコンテンツ配信サービスと堅牢なネットワーク、ストレージをトータルに提供できるのが、同社の強みとなっている。
これを背景に、米オバマ大統領の就任式のライブ報道(300万人以上が同時接続視聴)や、マイケル・ジャクソン氏の追悼式(200万人が同時接続視聴)等のほか、北京オリンピックやFIFAワールドカップ2010といった世界的なスポーツイベントのコンテンツ配信にもライムライト・ネットワークスの配信プラットフォームが活用されている。また、こうした動画のオンライン配信だけでなく、ゲームコンテンツの配信やイーコマース、広告、あるいはファームウェアアップデートなど、エンターテイメント系以外の領域での活用も広がっている。
さて、今後の戦略についてクラーク氏は「通信キャリアがCDNに参入するなど、競争は非常に激化している」と述べたうえで、オンライン化、モバイルデバイスの台頭、そしてクラウドへの移行、の3つのトレンドに対応する「サービス・ソリューションスイート」(下図)の提供により、今後の成長を企図していると説明した。すでに同社では、売上の30%をSaaS製品が占めており、「将来的には50%までその割合を高めたい」という。
ライムライト・ネットワークが提供するサービス・ソリューションスイート(製品群) |
国内で提供される主なソリューションは、以下通りだ。
(1)クラウドベースのビデオコンテンツ配信プラットフォーム「Limelight Video Platform(LVP)」
コンテンツの登録から、変換、管理、収益化、配信、レポートまでのワークフローを一貫して提供するもの。特筆すべきは、コンテンツ変換を自動化する機能を備えている点だ。通常、動画を作成し配信する側は、PCや各種スマートフォン/タブレット向けにコンテンツを複数のフォーマットに変更して管理する必要があるが、LVPでは、視聴するユーザーのデバイスに最適な形に自動変換して配信することができる。
(2)「Limelight Reach」、「Limelight Reach Ads」
「Limelight Reach」は、モバイルデバイスに最適化された配信機能のみを提供するもので、管理プラットフォームまでは不要な場合に適した製品だ。これを活用して効果を挙げた例としては、英BBCがある。従来、Flash形式のコンテンツ配信を行なっていた同社は、iOS端末のユーザーを取り込むべくLimelight Reachを活用。コンテンツの最適変換と配信機能によりiPhoneやiPadからの視聴を可能にした結果、配信数は従前に比べて20%も向上したという。
「Limelight Reach Ads」は、モバイルユーザー向けのビデオストリームにターゲットを絞った広告を挿入するソリューション。日付範囲や人口統計、地理データ、コンテンツの話題やタグによるターゲッティングが可能である。
(3)「Limelight Accelerate」
WebサイトやWebアプリケーションのレスポンスを高速化するソリューション。ブラウザとWebサイト間で交換されるデータのうち、不可視要素(表示領域外のデータ等)を除いてダウンロードするなどの仕掛けにより、ブラウザの表示を高速化する「フロントエンドアクセラレーション」を活用したものだ。サイト閲覧者が操作を行なってから次の操作が可能になるまで(例えば、通販サイトで商品ページを開き、申し込みボタンを押す)の時間である「タイム・トゥー・アクション」を短縮できる。サイト滞在時間の延長や、離脱率の低減等に大きく貢献する。
ライムライト・ネットワークスは現在までに国内250社以上にサービスを提供しており、今後、これらのソリューションを展開することにより、顧客ターゲットを拡大していきたい考えだ。それとともに、チャネル販売の強化にも着手。「裾野の広がりに対応するため、ライムライト・パートナープログラムも新たに立ち上げた。販路を拡大し、多様なニーズを取り込んでいきたい」(クラーク氏)という。