NTTドコモは2024年5月30日、携帯電話基地局に自家消費型の水力発電を活用する実証実験を開始すると発表した。国内初だという。
実証実験の構成
ドコモの消費電力の約7割が、携帯電話の通信を担っている全国の基地局で使用しており、基地局電力消費によるCO₂排出削減のため、太陽光発電システムや大容量蓄電池を導入したグリーン基地局を整備し、2023年度末時点で286局の運用を行っている。
太陽光発電システムで発電した電力は基地局の給電に使われるが、余剰電力はリチウムイオン電池に蓄え、災害などの長期停電時の備えとしている。またドコモは、エネルギー・マネジメント・システム基盤(以下、EMS基盤)を開発し、各エリア・基地局の発電量やCO₂削減量を可視化し、基地局を始めとするドコモグループの電力運用最適化に取り組んでいる。
EMS基盤を活用したエネルギー・マネジメントの取り組み
今回の実証実験で使われる水力発電システムは、熊本県立大学、島谷幸宏特別教授が開発したJet水車(ノズルから噴出される水の反動で水の噴出方向と反対向きにノズル自体を回転させる水車)によって発電された電力を基地局で使用できる規格の電力に変換。Jet水車によって取得された電力データや水力データを水力発電システムが収集し、EMS基盤と連携を行う。EMS基盤では、基地局の電力状況や水力発電システムの発電状況をリアルタイムで把握し、電力を監視制御する。
実証実験の様子
実証実験で検証するのは、
・水力発電システムで発電した電力を効率よく基地局に供給するための電源システム・回路トポロジーの最適化
・水力発電システムの設置候補となる基地局の選定、発電設備の実装、評価のノウハウ習得
の2点。実施期間は2024年5月30日から最大1年間となっている。
ドコモは、「2030年カーボンニュートラル宣言」や「2040年ネットゼロ」の実現に向け、河川や湧水、農業用水路などを活用することで、太陽光発電以外の再生可能エネルギーの活用を進めるとともに、今回の実証実験の結果を元に水力発電システムの有効性を検証し、太陽光パネルの設置が難しいい基地局向けに、2025年3月までに、水力発電システムによって発電した電力の活用を目指すとしている。