モバイルネットワークには次々と新技術・機能が導入されるが、なかでも5Gインフラを大きく進化させることが期待されているのが「O-RAN」と「NTN」だ。
O-RANは、RUやDU/CUといったRAN(無線アクセス網)を構成するコンポーネントをマルチベンダー化できるのが最大の利点だ。ただし、異ベンダーの製品を組み合わせるにあたっては、狙い通りのパフォーマンスや安定性が得られるかを検証・確認する結合試験や性能評価が欠かせない。
東陽テクニカが提供する「O-RAN試験ソリューション」の概要
これに用いられる「O-RAN試験ソリューション」を提供するのが東陽テクニカだ。各ノードの単体評価から、RU/DU/CUやそれらを制御するRIC(RAN Intelligent Controller)を組み合わせた結合試験、さらに、5Gコアから端末までエンドツーエンドでのパフォーマンス試験と、幅広い試験環境を提供している。
試験は必須としても、これら各ノードを実機で揃えるのは費用面でも、調達等の手間を考えても負担が大きい。そこで活躍するのが、各コンポーネントの機能・性能を擬似するエミュレータだ。
東陽テクニカブースに展示されている5Gコアのエミュレータなど
ワイヤレスジャパン×WTP 2024の同社ブースでは、Spirent社を中心に5GコアやDU/CU等を擬似する製品も展示している。「Spirent Landslide」は、4G/5G端末、基地局、各種モバイルコアを擬似することが可能。各コアノードの機能や性能評価を行うことができる。
シングルベンダーでRANを構築していた従来のモバイルネットワークと比べて、O-RANが普及し始めている現在は、試験・性能評価の重要度が増している。迅速なネットワーク拡充とエリア展開を行うには、その負荷軽減が欠かせない。各種ノードを擬似し、かつ、多数の端末が同時接続した場合の負荷も再現したテストを行えるLandslideを活用することで、実践的なO-RAN試験を実施することが可能だ。
疑似環境でLEO信号も遅延も再現、「5G NTN」実現を下支え
LEO(低軌道衛星)やHAPS(成層圏通信プラットフォーム)といった空を飛ぶ基地局と地上のスマートフォン等の間で直接通信を行う「NTN(非地上系ネットワーク)」も、世界中の通信事業者が導入検討を進めている。
東陽テクニカは、5Gエリアを飛躍的に拡大できるこのNTNの検証環境も提供している。前述のエミュレータを含め、同社が提供する試験・テスト製品を用いることで、宇宙空間や成層圏で用いられる通信機器の実証実験が可能だ。
NTN試験ソリューションの概要
上記のように、比較的低高度のHAPSからLEO、高高度のMEO/GEOまで通信の検証/擬似装置を揃えるが、現時点では実用化が先行するLEOに関する問い合わせや引き合いが増えているという。
衛星信号を擬似するエミュレータを含めて、こちらもSpirent社の製品を活用するが、加えて、IoT-NTNデバイスの性能試験が行える台湾ALifecom社のテストソリューションも組み合わせることで多様なテスト・試験ニーズに応えている。
高度1200km程度を高速で移動する低軌道衛星と地上の端末との間で直接通信を行うNTNでは、通信遅延が発生するなかでいかに安定したパフォーマンスが出せるかが鍵となる。東陽テクニカのブースではその環境を擬似するエミュレーターも展示。実機を確認しつつ、NTN試験環境について理解を深めることができる。