島津製作所は2024年4月17日、「光/音響ハイブリッド水中通信装置」のプロトタイプ(試作機)を開発したと発表した。同社製の水中光無線通信装置と他社製の音響通信装置を組み合わせて開発したもので、このプロトタイプを使って、防衛装備庁の2022年度の先進技術の橋渡し研究において水槽および実海面での実証実験を行った。
水中での通信は従来、ケーブルによる有線通信が主流であり、一部で音波による「音響無線通信」が利用されてきた。
有線通信は陸上と同様のリアルタイム伝送が可能ではあるものの、海流などの抵抗を受け、ROV(Remotely Operated Vehicle、遠隔操作型水中ロボット)の活動が制限される。一方、音響無線通信はAUV(Autonomous Underwater Vehicle、自律型水中ロボット)に搭載されているが、通信速度は数十キロbpsが限界のため、大容量データのリアルタイム伝送に難があった。
これらを解決すべく、国内外のメーカー・研究機関が水中光無線技術を開発してきている。その多くは発光ダイオード(LED)を光源に使う方式だが、島津製作所が製造・販売する水中光無線通信装置「MC100」「MC500」では半導体レーザーを採用しており、より指向性と応答速度に優れているという。
水中光無線通信装置「MC500」
今回のプロトタイプを用いた実験では、近・中距離での大容量データ通信では光無線通信装置を使い、周囲から侵入する外乱光や濁りの影響が強い水中や遠距離では音響通信装置に切り替えることで、光無線と音響通信を使い分けた。
島津製作所は安全保障や海洋資源探査、洋上風力発電の設置・点検、養殖を中心とする漁業などで使える水中無線通信技術を開発していく予定としている。