オプテージとLQUOMは2024年1月31日、長距離量子通信の社会実装に向けた実証実験を行ったと発表した。LQUOMの量子通信技術と、オプテージの大阪中心部の商用光ファイバーを組み合わせ、光ファイバーの位相安定化技術を実証した。
量子通信の長距離化を実現するにあたっては、光ファイバーの伸縮などに起因する位相ゆらぎの低減が課題の1つとなっている。今回の実証実験では、大阪中心部に商用光ファイバーを用意し、空間分割多重による新しい位相安定化手法を用いて、位相ノイズを大幅に削減できることを実証した。従来の安定化方式は、時分割多重および波長分割多重に限られていた。
実験では、空間分割多重を用いた位相安定化が、大都市部の商用光ファイバーで有効であることを確認した。計測した位相ノイズから、量子ビットエラー率と呼ばれる量子通信の指標を計算したところ、空間分割多重による位相安定化によって顕著な改善が見られ、この新しい位相安定化方式が量子通信において有効であることを世界で初めて実証したという。
また、将来の実用化を視野に、位相安定化技術が長期的に機能するかも検証。数日にわたって量子ビットエラー率の時間変動を調べたところ、地中ファイバーは安定している一方で、架空ファイバーは数時間のサイクルで顕著に変動していることが分かったという。
この違いは、架空ファイバーが風・気温変動などの外部環境の影響を受けやすいことを示唆しており、量子通信における位相安定化の観点に立つと、架空ファイバーよりも地中ファイバーの方が好ましい、という新たな知見を得られたとしている。