2024年の通信業界における注目の1つが、NTT法見直しだ。
自民党「NTT法の在り方に関するプロジェクトチーム(PT)」が、2025年の通常国会を目途にNTT法廃止を目指す提言をまとめたことで、「NTT法の役割は概ね完遂し、結果として廃止につながる」と主張するNTTに有利な流れができつつある。
これに対し、KDDIやソフトバンク、楽天モバイルといった競合事業者をはじめ、CATV事業者、地方公共団体は猛反発している。
KDDIなどがNTT法廃止に反対する根拠としているのが、①ユニバーサルサービス、②公正競争、③外資規制の3点だ。なかでもユニバーサルサービスは、条件不利地域におけるサービスの維持など国民にも直接影響を及ぼす重要テーマといえるだろう。
ユニバの対象が電話は時代遅れ
NTT法では、NTT東日本/西日本の電話役務の全国あまねく提供義務が規定され、電気通信事業法(以下、事業法)で、総務大臣の指定を受けたユニバーサルサービス提供事業者に対する交付金制度を規定する。
電話のユニバーサルサービス制度の対象となっているのが固定電話、公衆電話、110番などの緊急通報だ。
このうちメタル固定電話の契約数は、ピーク時(1998年)の約6300万契約から約1500万契約に減少している。これを根拠に、「NTT法で定められている固定音声サービスも含めて、電気通信事業法で定められているブロードバンドサービスのユニバーサルサービス義務に統合すべき」というのがNTTの主張だ。
図表 電話とブロードバンドにおけるユニバーサルサービスの比較
ユニバーサルサービスの対象については、「国民生活に最も必要不可欠なサービスは何かという視点で考えるべき」と三菱総合研究所 政策・経済センター 研究提言チーフ(情報通信)の西角直樹氏は指摘する。
三菱総合研究所 政策・経済センター 研究提言チーフ(情報通信) 西角直樹氏
「以前は電話が重要な連絡手段で、電話がないことは社会・経済からの排除を意味した。しかし、デジタル化が進展した現在、インターネットにつながらないと社会・経済から排除される。ユニバーサルサービスの対象として、固定電話よりもブロードバンドが優先される」と話す。
NTT法廃止に慎重姿勢の名古屋大学 大学院 法学研究科の林秀弥教授は「固定電話は、IP電話も含めると6000万契約と人口の約半分に上る。そのうち約1500万のメタル固定電話の契約者に対し、ユニバーサルサービス責務に基づきNTTがユニバーサルサービスを提供している。それを外すことが、国民生活に大きな影響を与えることにならないか検証が必要だ」と批判的だ。その上で、「ブロードバンドはリモートワークや遠隔医療などに必須であり、今や国民生活の基本的なインフラになっている。ブロードバンドもNTT法のユニバーサルサービスの対象に追加する方向で検討すべきではないか」との見解を示す。