ミロ・ジャパンは2023年12月20日、東京都内で記者説明会を開き、同社が提供するビジュアルワークスペース「Miro」の機能強化を発表した。説明会では、そのうち生成AIを活用した「Miroアシスト」、非同期のコミュニケーションを効率化する「Miro Talktrack」が紹介された。
ミロ・ジャパン代表取締役社長の五十嵐光喜氏
説明会の冒頭、ミロ・ジャパン代表取締役社長の五十嵐光喜氏は、同社が世界中の企業に対して行ったイノベーションに関する意識調査の結果を説明した。イノベーションの最大の阻害要因として挙がったのは、グローバルと日本ともに社内が「変化に対応してくれない」ことだったという。また、日本の場合、「多様なアイデアの欠如」「失敗に対する恐れ」も同じくらい多かった。
五十嵐氏は、「こうした阻害要因を、デジタルでの“ワイガヤ”を提供して取り除きたい」と話した。ワイガヤは、年齢や職位にとらわれずワイワイガヤガヤと腹を割って議論することで、イノベーションを生み出す手法。ホンダが実践していたことで知られる。
生成AIでアイデア出しを省力化
“ワイガヤ”をデジタルでどうやって実現するのか。その具体的な機能は、同社Head of Solution Engineeringの石動裕康氏が紹介した。
Miroは2023年6月に、データの自動仕分けやクラスタリングなどの機能を持つ「Miro AI」を搭載している(関連記事:“ホワイトボード”から“ビジュアルワークスペース”へ AI搭載で進化したMiro)。今回、Miro AIが生成AIを活用した「Miroアシスト」となり、対話形式でアイデアを生み出すサポートを提供する。
社内の議論によってオフィス環境を改善する取り組みを例に石動氏は説明した。まず、社員を対象に現在のオフィス環境についてアンケートを行い、その結果のExcelデータをMiroに取り込む。すでに提供されている機能によって回答をトピック、ネガ・ポジなどに自動分類できる。それに加えMiroアシストでは、「要望の多いトップ5」など、アンケート結果からの抽出などの操作を対話形式で行うことができるようになった。抽出した結果は付箋としてボード(Miro内の作業スペース)に貼り付け、次のステップでの議論に活用できる。
Miroアシストを利用して要望のトップ5を抽出。左側の付箋(青い囲み)の意見に対して、右側のMiroアシストに質問している
このように、多様な意見を簡単に集約、分析できることは、人手のデータ整理作業を減らし、その分の時間と労力を議論そのものに充当できることにつながるといえる。
MiroアシストはChatGPTなどの一般的な生成AIと同様、対話型UIにプロンプトを自由に入力できる。例えば「最近のオフィス環境のトレンド」などの参考情報も質問して得ることができ、議論の材料に加えることも容易だ。ウェブ上の資料を加える際は、ポイントの抽出や翻訳など、議論の負担にならないような処理も施せる。
ディスカッションの内容をマインドマップで可視化することも簡単だ。AIに質問しながらマインドマップに手軽にアイデアを追加できるので、「アイデア出しをAIにまかせることで、議論が省力化する」(デモを行った同社 Solutions Engineerの高木智範氏)。既知のことがらの整理はMiroアシストが担えば、議論が脱線することも少なくなるだろう。
議論の結果を社内に共有するプレゼンテーション資料の作成も、AIがサポートする。ビジュアル化されたプレゼン資料が自動で作成され、人間は章立ての調整などの修正を行うだけでよい。作業には他のアプリケーションは不要で、Miro上のみで完結するという。