ローカル5Gの活用にあたり、対応端末の少なさは課題の1つだった。スマートフォンやタブレットなどの汎用端末をローカル5Gシステムで利用したい場合、選択肢が限られていた。また対応機種は比較的高額で、端末調達コストが導入コストにそのまま反映されてしまう。
iPhone/iPadがL5G対応
2023年6月に、アップルはiOS 17、iPadOS 17がスタンドアローン(SA)方式、ノンスタンドアローン(NSA)方式双方のローカル5Gと、プライベートLTEをサポートしたと発表した。2021年9月以降に発売されたiPhone13/14/15およびSE(第3世代)、iPad(第10世代)、iPad mini(第6世代)、iPad Air(第5世代)、iPad Pro(12.9インチは第6世代、11インチは第4世代)が対応し、ローカル5G対応端末が大幅に増えることを意味する。なお、日本国内においてはiPhoneはミリ波帯に対応していないため、これはSub6帯に限られる。
東京大学・中尾研究室(中尾彰宏教授)の研究成果を製品化しているベンチャー企業であるFLARE SYSTEMSは2023年9月22日、各OS搭載のiPhone/iPadと同社製のローカル5Gシステムとの接続検証を行い、通信などの動作に問題がないことを確認したと発表した。
「業務利用しているiOSアプリは多い。それらをローカル5Gで動かせる期待感は大きい」と、FLARE SYSTEMS 取締役 営業本部長の松浦晋之介氏は説明する。普及している市販端末をそのまま使え、高価な法人専用端末を用意する必要もない。また、iPadがローカル5Gに対応することで、対応端末が非常に限られていたタブレットでも利用が広がる。
FLARE SYSTEMS製ローカル5GシステムとiPhoneの接続確認(出典:FLARE SYSTEMSプレスリリース)
ローカル5GがPoC・実証段階から商用に移行すれば、必要となる端末数は段違いになる。端末の調達が容易になるのは朗報だ。
しかし、1つ疑問がある。ローカル5Gで使用されるSub6帯のn79バンドに対応するスマートフォンはiPhone以外にも各社から販売されている。そうした端末をローカル5Gで使用できないのだろうか。
同社 技術本部長の織田和彦氏は「それらの多くはSA方式に対応していない」と指摘する。FLARE SYSTEMSの検証でも、カタログの対応周波数に『n79』と記載があるだけの端末は、ローカル5Gでは「ほぼ動かない」。日本で構築されるローカル5GのほとんどはSA方式であるため、SA方式に対応していない端末はローカル5Gでは使えないと考えてよいことになる。