3.4.1 トップダウンでもゲリラでもない運営体制
Nextiで特筆すべき点のひとつは、その運営体制が会社組織から独立しているということです。
社内SNSに限らず社内システムは通常、情報システム部門かスタッフ部門が運営するのが一般的です。それがNextiは前述した通り、本業を抱えた現場の有志社員が「リスペクターズ」を結成し、自発的に企画・運営体制を敷いています。といって、非公認の「ゲリラ的な取り組み」でもありません。リスペクターズの取り組みは企業変革を目的とした「新・行動改革WG」活動に端を発しており、それを社員の自発的な活動によるボトムアップ施策の一環として経営陣がコミットし、実施しているからです。
ボトムアップによる社員の熱意が経営層を動かし、経営層は、Nextiの存在意義を認めつつも、企画・運営全般をリスペクターズに一任しています。そのおかげで、リスペクターズは既存の組織であれば避けて通れない、過去のしがらみや社内調整、利害関係をそれほど意識する必要がありません。アイデアと行動力を存分に発揮できる環境が成り立っているのです。
「社内SNSについて頭では理解できるものの、具体的な実現イメージまでは湧かない」という状態にも関わらず、経営層はリスペクターズの熱意と目的意識を信じ、実行を承認しました。なおかつ、リスペクターズが極力自由に活動できる環境を与え、自らユーザーとしてNextiの効果を体感し、クチコミしてくれています。経営層のチャレンジと社員への信頼、社員の課題認識と熱意。そのバランスの良さが、Nexti運営の根幹を支えています。
3.4.2 運営者とユーザーの垣根が低い
リスペクターズのメンバーは、普段は所属部署で日々本来の業務を遂行している社員ばかりです。Nexti立ち上げの際も、使う側の目線で機能やデザインについて検討し、素人なりの大胆な発想で企画を推進してきました。日頃、社内システムを使う立場にあるので、ユーザーの気持ちをよく理解しています。そのためNextiの運営に際しても、「あなた使う人、私運営する人」ではなく、普通にNextiを使うかたわら、ユーザーからの問い合わせにも回答しています。
一般には、「運営者」という職務を与えられた瞬間にユーザーではなくなり、運営側の論理で行動するようになります。ユーザーからも、「運営者だから完璧に運営して当然」と見られがちです。その点、リスペクターズは「たまたま運営も担当している一介のユーザー」であり、万能ではないことを自他ともに認めています。質問者の状況を親身になって理解し、可能な限り手を尽くして調査し、解決策を考える。それでも解決しきれない事柄には「一緒に考えてもらえないか」と質問者や社内外の有識者を巻き込み、みんなで課題を共有して解決に当たっています。
本業を抱えているので、問い合わせや依頼を受けても、即座に対応できない場合もあります。それでも、「遅れてしまってすみません」という姿勢で対応すると、「本業を抱えながら大変ですね。こんなに早く回答をくれてありがとう。頑張ってください」と応援されることのほうが多いのです。