実世界で起こる事象をデータ化して捉え、異常事態に対処し、トレンドを把握して改善する──。IoTが様々な産業に広がり、社会の隅々へ浸透し始めている。
IoT技術とそれをベースとするCPS(サイバーフィジカルシステム)の活用範囲が広がれば広がるほど、世の中から“わからないこと”は減っていく。異常や無駄が分かれば改善も進む。
だが、それには、データから何かを読み解く頭脳が不可欠だ。データサイエンティストの需要は今後ますます高まるが、その役割を期待されているのは人間ばかりではない。ChatGPTに代表される生成AIはこのデータ分析の担い手となり、IoTを誰にも身近なものへと進化させる可能性がある。
時系列データをChatGPTで解析
これを追求する1社が、「IoTテクノロジーの民主化」を掲げるソラコムだ。
同社はこの7月、AI技術の社会実装に強みを持つ松尾研究所とともに、IoT分野における生成AIと大規模言語モデル(LLM)の活用推進を目的とする「IoT x GenAI Lab」を設立した。生成AI、LLMを用いた技術検証やプロトタイピング、プロダクト開発等の活動を行う。
合わせて、ChatGPT(Azure OpenAI ServiceのGPT-3.5 Turbo)を用いてIoTデータを分析し、異常発生を自然言語で通知したりトレンドを解説したりする新サービス「SORACOM Harvest Data Intelligence」を開発。Public Betaとして無償提供も始めている。ソラコムでテクノロジー・エバンジェリスト 事業開発マネージャーを務める松下享平氏は、その狙いを次のように語る。
ソラコム テクノロジー・エバンジェリスト 事業開発マネージャー 松下享平氏
「IoTによって時系列データが溜まってきているものの、データサイエンティストがそこからインサイト(洞察)を得ることとの間には大きなギャップが現状ある。我々のこれまでの取り組みは、単なる数字の羅列よりはわかりやすいグラフでデータを表示して、『皆さんでインサイトを得てください』というものだった。そこから一歩踏み込んで、生成AIを使ってデータを読み解いてもらうための仕組みを作った」