第1回ではリアルタイムコミュニケーション基盤「Microsoft Lync」の概要を解説したが、今回からはLyncの機能を詳細に見ていくことにしよう。第2回のテーマは、IM(インスタントメッセージング)とプレゼンスである(連載目次はこちら)。
IMとプレゼンスは、Lyncが提供する価値のなかでも最も本質的な部分だ。IMとプレゼンスを理解することは、Lyncの真髄を理解することと言うことができる。
リッチなリアルタイムコミュニケーションを実現するIM
IMは、テキスト/音声/ビデオなど多様なメディアを使ってリアルタイムにコミュニケーションを行うためのツールだ。コンシューマー向けのIMとしてはMSN/Windows Live MessengerやYahoo!メッセンジャーなどがよく知られており、プライベートで利用している人も少なくないだろう。
Lyncは企業向けであるが、基本的な機能はこうしたコンシューマー向けのIMと大きく変わらない。テキスト/音声/ビデオを使って相手とコミュニケーションできるほか、ファイルを転送したり、アプリケーションを共有することなども可能だ。電話やメールなど他のツールと比較すると、非常に豊かなコミュニケーションがリアルタイムに行えるのがIMの特徴である。また、後ほど詳述するようにプレゼンス――連絡を取りたい相手が今どのような状態にあるのか、お互いのプレゼンスを共有する仕組みを備えているのもIMのポイントである。
(写真1)Microsoft Lyncでコミュニケーション中の画面 |
ところで、コンシューマー向けIMとLyncとの重要な違いの1つには、運用管理面が挙げられる。IMは使い出すと、とても便利なツールだ。そのため社員が勝手にコンシューマー向けIMを導入・利用しているケースも多い。しかし、これは情報漏えいやセキュリティの面から見て非常に重大な問題なのである。例えば、IMのファイル転送機能を使えば、社外秘のファイルを証拠を残さず社外に送ることも可能だからだ。企業で利用する場合には、無料のコンシューマー向けではなく、やはりLyncのような企業向けを導入することが必要だ。
情報漏えいやセキュリティ対策の面だけでいえば、社内でのIM利用の禁止を徹底するという手ももちろん考えられるだろう。実際、IMを禁止している企業は少なくない。しかし、社員は何も問題を起こすために勝手にIMを使っているわけではない。IMを使うことで、効率的にコミュニケーションが行え、生産性が上がるから使っているわけだ。とすれば、会社側が考えるべきはIMの禁止ではなく、企業向けIMの導入のはずである。
なお、Lyncはコンシューマー向けIMとコミュニケーションするための「パブリックIM接続機能」を備えており、例えばWindows Liveとの間では音声/ビデオ通話も行える。
LyncのIM機能の基本
それではLyncのクライアントソフト「Lync 2010」のインターフェースを見ながら、IMとプレゼンスについて説明していこう。以下で使うのはWindows PCの画面だが、Lyncはクロスプラットフォームに対応する。Lyncの前身である「Office Communications Server」(OCS)ではサポートしていなかったMac向けの「Lync for Mac 2011」が登場予定のほか、モバイルについてもWindows Phone 7、iPhone、ノキア向けのクライアントソフトが計画されている。さらにWebブラウザ上で動く「Lync Web App」も用意される。
(写真2)「Microsoft Lync 2010」の画面 |
さて、上の写真2がLync 2010の画面であるが、最上部に表示されているのが自分の名前と写真だ。そして、その下の一覧表示が「連絡先リスト」である。連絡したい相手にマウスを重ねると、写真3のような画面になるので、左側に表示された「連絡先カード」、もしくは名前右に表示された「通話」ボタンから連絡方法を選ぶとコミュニケーションを始められる。
(写真3)左に表示されたのが「連絡先カード」。下部に並ぶアイコンを使って、メール、テキスト、音声、ビデオによるコミュニケーションを始められる |
(写真4)コミュニケーション中の画面。まずテキストで「いま電話してもいいですか?」とやり取りし、それから音声/ビデオ通話に切り替えるというのは、IMではよくあるパターンだ |
コミュニケーション方法としてはメールも選べるが、これはOutlookと連携しているためだ。マイクロソフトのOffice製品群と高度に統合されている点は、他社の企業向けコミュニケーションツールと比較した場合のLyncの大きなアドバンテージの1つである。
Lyncでは連絡先リストに仕事仲間の顔写真が表示可能になったが、これもOffice統合の賜物だ。Lyncでは、Active Directoryに登録された顔写真を参照している。SharePointの個人用サイトに登録した写真がActive Directoryにフィードされているのである。