情報通信産業を「生態系」と「進化論」で語ろう[第2回]「NGN」と「光の道」を収斂進化させる方法

生態学の理論を使って「情報通信産業」を分析すると、一体何が見えてくるのか――。今回はNGNと「光の道」構想について考察する。(編集部)

第1回では、一連のサービスの進化は「収斂進化」であることを見た。繰り返しの説明となるが、収斂進化とは、異なる種の生物同士が類似した姿や器官を持つことをいう。哺乳類のイルカと魚類のサメのように種は異なっていても、生存競争をくぐり抜けるなかで、似た形態へと進化することがあるのだ。これが収斂進化である。

サービスの世界における収斂進化の例として前回、ダイヤルQ2とiモード、iPhoneの相似を挙げた。これらは異なる種のサービスであるが、そのビジネスモデルなどは非常によく似ている。

NTTのNGN、キャプテンシステム、Lモードを収斂進化の例と見る人もいるかもしれない。だが、これは収斂進化ではない。なぜなら、その遺伝子は同じだからだ。子供が大人になったようなもので、種は変わっていないのである。

NGNが成功するには収斂進化が必要だが、一体どのような姿に収斂進化すればいいのだろうか。

NGNが見習うべきは「異なる種」

NTTがやるべきことは、NGN上で動くサービスの開発環境のオープン化である。NTTは「すでにNGNはオープンだ」と主張するが、アップルやAndroid、Windowsの開発環境のオープン化と比較して欲しい。おそらく同じオープン化といっても、パラダイムが全然違う。NTTは一度、アップルやマイクロソフトの開発環境をめぐる戦略のベンチマークをやってみてはどうだろうか? その上で、アップルやマイクロソフトの開発環境に携わったエンジニアや企画者を採用してはいかがだろうか? このまま放置すれば、NTTのNGNの外でプラットフォームが多様化し、NTTはただのパイプ屋になってしまうかもしれない。

NGN上で展開する具体的なサービスとしては、私の周辺ではゲームを推す人が多い。しかしNTT東西がゲームを外注し、自社ブランドで配信している限りは、キャプテンシステムと変わりない。NTTはiモードが成功した理由をよく理解することだ。英BTはゲーム機器ベンダーとも組んで、NGN上でゲーム事業を展開している。

PCが企業に普及し始めた頃の話だ。あるベンダーは、第三者が開発したソフトウェアについても自社ブランドで流通させることにこだわった。第三者のブランドで使うしかないとようやく悟ってからも、自社で認証したソフトウェアであることに固執した。だからNTTが自社での囲い込みにこだわることには何の不思議も感じない。だが、そのアプローチよりもアップルやマイクロソフトの方法、それが無理であるのであれば、せめてゲーム機器ベンダーやドコモのとった方法を採用する方がNGNの発展に寄与するだろう。

時代は、まったく異質な世界へと非連続にジャンプした。今までの延長線には、答えはない。これからのサービスは、異なる種に生まれ変わるかのごとく、収斂進化するしかないのだ。

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池末成明(いけまつ・なりあき)

大手コンピュータメーカーにて海外市場での通信機器販売、PCやサーバーの国際戦略立案を担当。その後トーマツグループのコンサルティング会社にて、情報通信市場での事業計画と予算管理、原価計算、接続料問題を主に担当。現在、有限責任監査法人トーマツにて、世界のナレッジマネジャーとともに世界の情報通信メディア業界の調査と事業開発に従事

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