日本代表の活躍で沸いた2022FIFAワールドカップ カタール大会は、4年前までのテレビ放送ではなく、ABEMAのライブ配信で楽しんだ人も多いだろう。同大会に限らず、スポーツやイベントのライブ配信はもう当たり前になった。これは、IPネットワークによる映像伝送技術や、サーバー/クラウド側の映像編集・配信技術の進化によって、低遅延かつ安定したリアルタイム伝送・配信が可能になったことが背景にある。
高まるメディア業界の期待
この動きが、メディア業界をはじめとする様々な産業界の5G活用を後押しすると話すのは、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)PS本部 5G&IoTサービス部 5Gサービス部門 第五グループの町田圭司氏だ。
「この世界観が5Gによって加速していく。遅延のない映像伝送技術は、昔は放送局しか持っていなかったが、それがリーズナブルに使えるようになってきた。もちろんワールドカップ中継と同等品質というわけにはいかないが、5Gを使った映像伝送ソリューションでどこでも簡単にライブ配信ができる。メディア業界の評価は高く、また、映像を使った遠隔体験や作業支援などの用途も増えてきている」
NTTコミュニケーションズ PS本部 5G&IoTサービス部
5Gサービス部門 第五グループの町田圭司氏
NTTドコモ、そして様々なパートナーと共に5G活用ソリューションを展開する同社は「メディアや教育、建設、製造、医療の分野に注力」しながら、現場映像のリアルタイム伝送を切り口とした用途開拓を進めている。
5Gサービス開始当初からドコモが続けてきた取り組みと大きく変わったのが、ソリューション開発・提案の体制だ。ドコモがNTT Comを子会社化したことで、「提案できる手段・要素が増えた。5Gだけでなくローカル5Gも有線もクラウドも含めてバーティカルに様々なものを提案できる」と町田氏。クラウドやSI事業を長年手がけてきたNTT Comの業務課題抽出やソリューション提案ノウハウと、ドコモのモバイル技術の融合に大きな手応えを感じているという。
MECは低遅延だけじゃない
そのソリューション開発において武器となっているのが「docomo MEC」だ(ドコモオープンイノベーションクラウドから名称変更)。5Gサービス部門第四グループの西田卓爾氏によれば、パートナーのソリューションも含めて「延べ250を超える利用実績がある」。MEC拠点数も9カ所に拡大し、5Gエリアの拡大と相まって、「全国カバーできる配置が実現した」。
NTTコミュニケーションズ PS本部 5G&IoTサービス部
5Gサービス部門 第四グループの西田卓爾氏
MEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)と言えば、通信路の短縮によって低遅延通信が利用できることが売りだが、実は「セキュリティの評価が高い」と西田氏は話す。
docomo MECでは、ドコモ網内で通信が完結する「MECダイレクト」機能(図表)を提供しており、これにより、カメラと5Gルーターさえあれば閉域ネットワークで無線映像伝送が容易に行える。「特別なセキュリティの仕組みを作るとコストがかかるが、MECならインターネットに出ないことを担保できる」ことが高評価の理由だ。
図表 docomo MEC「MECダイレクト」機能のイメージ