企業間コラボに効果を発揮
後編ではまず、グループウェアと呼ばれてきた従来型と新たに登場したコラボレーションツールの差異を見ていくことにしよう(図表3と図表4)。
図表3 従来型とクラウド型コラボレーションツールの比較 |
図表4 進化するコラボレーション/コミュニケーションツールの機能 |
従来のコラボレーションツールの機能は、「コラボレーションを準備する」ためのツールという側面が大きかったが、現在は、リアルタイム系の音声通話/Web会議、Twitterに代表されるマイクロブログの機能の利用が進み、ネットワークで結ばれたオフィスワーカーが実際に「共同作業を行う」場を実現する機能の実装が急速に進行している |
前述したように大きな違いはリアルタイム性だ。従来型のコミュニケーションツールはメールが中心。それに対し、クラウド型はメールに加えてインスタントメッセージ(IM)、ツイッター(マイクロブログ)、Web会議などのリアルタイムコミュニケーションツールを実装している。メールは企業に根づいているが弊害も指摘されている。
「メールはリアルタイムではない。相手がメールを読んでいるはず、内容を読み解いているはず、アクションしてくれるはずという思いこみで仕事が進んでいる」と日本IBMの工藤美恵子氏(ソフトウェア事業Lotus事業部クラウド・ソリューションセールス・リーダー)はメールの問題点を指摘する。実際、メールの発信者の思惑通りにことが運ばないことは珍しくない。しかも、メールを受け取る側はその処理に多くの時間とパワーを割いている。メールが抱える問題を解決するため、LotusLiveは添付ファイルは使わずにオンラインでファイルを共有する仕組みを用意してメール自体を軽くするとともに、リアルタイムなコミュニケーションができるIMやWeb会議機能を設けている。それがオフィスワーカーの業務を効率化し、ビジネススピードを上げる。
第2の違いは、コミュニケーションの範囲が組織内か、組織外かという点である。クラウド型は組織外を巻き込んだコミュニケーションに特に効果を発揮する。オンプレミスだと企業外のメンバーを呼び入れてコミュニケーションすることを運用上、認めない企業が多い。だが、初めから外部のリソースを利用するクラウドサービスならそうした制約はない。自分が参加しているコラボレーションツールの場にいけば連絡コミュニケーションはもちろん、ファイルの共有やアクティビティ機能を使ってプロジェクトのマネジメントが行える。そこにSNS的な招待制の機能が働く。
例えば、「LotusLiveはゲストユーザーという考え方で顧客を招待してコラボレーションできる」と日本IBMの工藤氏は語る。サイボウズLiveも招待制を取り入れている。その仕組みは、複数の企業が集結して期間限定のプロジェクトを運営するために欠かせない情報共有の場を設けるのに向く。同様に、非正規社員にコミュニケーションシステムの利用を可能にする方法としてもクラウド型コラボレーションツールは注目されている。
第3の違いは、業務に関する知識や情報の形態、そして利用の仕方である。それを実現しているのはブログやツイッター(マイクロブログ)などのソーシャルテクノロジーである。形式知となっている文書データベースに対して、ソーシャルテクノロジーは人に注目し、人のもつ暗黙知を伝える道具だ。それが、社員の業務力を強化する役割を担う。IBMはソーシャルテクノロジーをオンプレミス型のLotus Connectionsに採用し、社内で利用している。社員のプロフィールにタグを付けて専門的な知識を持つ人を探すといった具合に人との関係を深めていく使い方だ。その一部がクラウドサービスのLotusLiveに盛り込まれている。日本IBMの行木氏はこう語る。
「ソーシャルテクノロジーはディスカッションの過程を含めて公開できる。若い世代が暗黙知を知ることで能力を発揮しやすくなる」
そして、暗黙知は社内Wikiとして形式知となっていく。ITmediaリサーチインタラクティブ/ITRによる「その他のコラボレーション/コミュニケーションツールの利用動向と今後の予定(全体)」という調査はソーシャルテクノロジーに関する企業の利用意向を調べたものだが、現在と今後とも社内Wiki・掲示板の利用度が高い。また、マイクロブログに対する注目度も急上昇していることにも注目したい(図表5)。
図表5 その他のコラボレーション/コミュニケーションツールの利用動向と今後の予定 |