全部で13もあるNTTのR&D組織の中で、人の能力を深く理解することで次世代のコミュニケーション技術の実現を目指しているのが、コミュニケーション科学基礎研究所(CS研)だ。
このCS研が2022年6月2日と3日に、最新の取り組みを紹介するオンラインイベント「NTTコミュニケーション科学基礎研究所オープンハウス2022」を開催する。それに先立ち、5月30日に行われた報道機関向け内覧会では6つの研究成果についてデモが行われた。このうち、私達にとって身近な存在となりつつある「対話AI」に関する取り組みを紹介しよう。
移り変わる景色を話題にする対話AI
ドライブに対話は付き物だ。同乗する家族や友人、恋人との対話を楽しむほか、偶然目にした店で食事をしたり、予想外の観光スポットを見つけて立ち寄ったりする。加えて、同乗者との会話には眠気を紛らわせたり、注意力が散漫になることを防ぐ効果もある。
1人でクルマを運転しているときにも同じようにパートナーとして振る舞ってくれるロボットがいたら、心強く、ドライブが楽しくなるかもしれない。CS研が今回デモ展示した「雑談対話AI」は、そんな未来を目指して開発されているものだ。
「雑談対話AI」のデモの様子。移り変わっていく風景を
ロボット(中央)が映像で認識し、それを基にドライバーと対話する
この雑談対話AIは、私たちの身の回りの状況を理解し、対話の内容に取り込むことができるという点で、従来型の対話AIと異なる。
従来の対話AIは基本的に、話者の発話から得られるテキスト情報のみを入力情報としていた。例えば「アレクサ、明日の天気は?」という発話に対して、天気予報を検索し「明日の文京区の天気は晴れ、最高気温は…」と反応する。