ウォッチガードがクラウドベースの新戦略、「多要素認証」を中小企業にも

UTMベンダーのウォッチガードが、SMB向けに多要素認証ソリューションを提供し始めた。同社のクラウド強化戦略の第1弾であり、これまで弱かった中堅企業を開拓する“武器”としての役割も担う。

中堅企業のシェア伸ばすAuthPointの特徴は、クラウド上で認証基盤が提供されることだ。前述の通り、SMBに多要素認証ソリューションが広がらない大きな理由はコストにある。

しかし、AuthPointの場合、専用アプライアンスやサーバーソフトの購入が不要なため、「競合他社と比べて、非常に安価に導入できる」と同社プリセールスエンジニアの猪股修氏は話す。

AuthPointのターゲットとしては、SMBの中でも特に中堅企業を想定しているという。やはり、規模が大きい企業ほど多要素認証への関心は高いからだが、このことは中堅企業へのUTM拡販にもつながると見ているという。

「我々はこれまで、どちらかというとSMBの中でも“小”の企業をケアしており、エンタープライズへのアプローチは弱かった」

6月に代表執行役員社長に就任した谷口忠彦氏はこう述べたうえで、「AuthPointというニューテクノロジーによって、競合他社から少しビハインドしていた部分をキャッチアップしていきたい」と意気込んだ。実際、すでにUTMビジネスとのシナジーは出てきているという。

なお、ウォッチガードでは今後、企業の独自アプリケーションについてもSSOできるようにするという。

ウォッチガード・テクノロジー・ジャパン 代表執行役員社長 谷口忠彦氏(右)、システムエンジニア部 プリセールスエンジニア 猪股修氏
ウォッチガード・テクノロジー・ジャパン 代表執行役員社長 谷口忠彦氏(右)、
システムエンジニア部 プリセールスエンジニア 猪股修氏

クラウドで多階層管理を強化実はAuthPointは、ウォッチガードの新しいクラウド基盤「WatchGuard Cloud」を使ったソリューションの第1弾でもある。

同社は今後、これまで機能ごとに別々に構築していたクラウド基盤をWatchGuard Cloudに統合していきながら、様々なかたちでソリューションの強化を図っていく計画だ(図表2)。

図表2 WatchGuard Cloudプラットフォーム
図表2 WatchGuard Cloudプラットフォーム

第2弾としては、可視化ツールの「Dimension」のWatchGuard Cloudへの統合を予定しており、従来のように自分でサーバーを立てなくても、セキュリティ状況を可視化できるようにする。

WatchGuard Cloudに統合していく一番の目的は、マルチテナント/マルチTier(多階層)管理体制の強化にあるという。ウォッチガードの場合、UTMと一緒に運用管理サービスもあわせて提供するMSSP(Managed Security Service Provider)のパートナーが多い。ただ、従来は、「そのパートナーの下にも販売店があって、さらにその下にも販売店と、Tierがたくさんあり、管理が大変になっていた」(猪股氏)。

しかし、WatchGuard Cloudへの統合が進むことで、マルチテナント/マルチTier環境での運用管理性は抜本的に向上する。個々の販売店やユーザー企業等に対して、必要な権限を適切かつ柔軟に設定できるようになるからだ。また、将来的には「ウォッチガードが提供するサービスは、すべてWatchGuard Cloudで管理できるようになる」と猪俣氏は説明する。

「米国ではMSSPが顕著に伸びており、いずれグローバルで同じ流れになるだろう。日本でも今後さらにMSSPのパートナーの育成やリクルーティングに力を入れていく予定だ。WatchGuard Cloudは、そのための基盤として重要なキーになってくる」と谷口氏。WatchGuard Cloudの第1弾であるAuthPointは、ウォッチガードの新戦略の第1弾でもあるわけだ。

月刊テレコミュニケーション2018年9月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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