SIMカード上への搭載が主流に
NFCは、Mifareの開発元であるフィリップスと、FeliCaの開発元であるソニーが中心となって規格化を進めた技術である。ISO/IEC18092として規格化されたNFCIP-1という仕様では、Type AとFeliCaの技術仕様のうち、通信部分を抜き出して標準が作成された。その後、Type Bや近傍型の仕様も取り込んだNFCIP-2も策定された(ISO/IEC21481)(図表2)。
図表2 Near Field Communicationの概念図 |
NFCの標準化と併せて、ソニーとフィリップスは2004年にNFC Forumを立ち上げ、実装およびサービス化のための標準作りを進めている。現在、NFC Forumにはソニーを始め、フィリップスからMifare事業を引き継いだNXPセミコンダクターズ、NTTドコモ、ノキア、VISAなど140社以上が参加している。
NFCは無線通信の技術であるから、その適用先としてはPC、テレビなどの家電製品や看板、ポスターに至るまで、さまざまな機器が考えられる。その中でも特に期待が高まっているのが携帯電話であり、NFC Mobileと呼ばれることも多い。
NFC Forumでは、携帯電話へのNFCの搭載方法として、以下の3種類のモデルを提示している。これらは、決済や交通乗車券など、セキュリティを確保する必要があるアプリケーションをどこに格納するか、という観点で検討されたものである(図表3)。
図表3 端末搭載のパターン |
(1)端末内部にアプリケーション領域を確保する方式
携帯電話の端末内に、NFC用のSecurity Elementとよばれる領域をつくり、そこにNFCのアプリケーションを載せる。
(2)外部メモリにアプリケーション領域を確保する方式
SDカードやMMCなどの外部メモリにアプリケーションを搭載し、このカードをNFC対応携帯電話に挿入してサービスを利用する。
(3)SIMカード上にアプリケーションを搭載する方式
携帯電話のSIMカードにNFC用の領域を確保し、そこにアプリケーションを搭載して利用する。
これら3つの方式は、携帯電話端末メーカー、サービスプロバイダー、通信事業者の3社の視点で見たときに、それぞれビジネス上のチャンスが異なる。おサイフケータイにおけるフェリカネットワークスのように、セキュリティ領域の管理機能を保有することにより、その領域を他社に貸与するとういうビジネスが生まれると考えられるからである。
(1)の端末内部にアプリケーション領域を確保するタイプの場合、携帯電話端末メーカーにそのビジネスチャンスが生じる。日本では、通信事業者へのOEMという形で携帯電話端末が開発されることが多いが、海外ではノキアやサムスン電子、最近ではアップルなどメーカーが独自に端末を開発し、複数の事業者に提供することが多い。従って、端末内部にセキュリティ領域を作ることで、メーカーが領域管理の主導権を握ることができる。
(2)の外部メモリにアプリケーション領域を確保する場合は、外部メモリに領域が作られるため、さまざまなプレーヤーがその領域を他社に貸与することが可能になる。例えば、銀行などが決済アプリケーションを搭載したメモリカードを開発し、余った領域を他のサービスに開放する、といったことが可能になる。
(3)のSIMカード上にアプリケーションを搭載する方式では、通信事業者が主導権を持つ。もともとSIMカードは携帯電話の番号などを格納するために利用されているものであり、事業者が管理している。よって、ここにNFCのアプリケーションを載せるためには、事業者との交渉が必要となる。
このような背景から、いずれの方式が主流となるかについては、特に端末メーカーと通信事業者との間での綱引きがあった。しかし、世界中の800以上の事業者が加盟するGSM Associationが、NFCの方式として(3)を推奨することを発表した。端末メーカーも、事業者に逆らい続けることはできないため、(3)の方式が主流となることが確定的である。