――岸田内閣の主要政策の1つが「デジタル田園都市国家構想」です。「地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めていくことで、世界とつながる」との目的を掲げています。
二宮 高齢化や過疎化など、今まさに日本で問題になっていることは、地方が直面している課題であり、地方にこそ新たなデジタル技術の利用ニーズはあります。自動配送ドローンや遠隔医療、遠隔教育といったアプリケーションをしっかり実装し、地方からボトムアップで国全体の成長を実現していくことが何より重要だと考えています。
では、そのためにまず何が必要かというと、時代を先取りしたデジタル基盤です。
デジタル基盤と言っても様々なものがありますが、今後さらに大事になっていくものとしては光ファイバや5G、そしてデータセンターや海底ケーブルなどが挙げられます。
総務省 総合通信基盤局長 二宮清治氏
――それぞれの現状と今後の施策について教えてください。
二宮 光ファイバに関して日本は諸外国に比して進んでいます。2021年度末の世帯カバー率は99.7%の見込みと世界最先端です。2020年度の補正予算で500億円の補助金を投じた効果もあり、地方での整備もかなり進んでいます。ただ、その実態を見ますと、地域間格差は依然残っています。カバー率100%の地域がある一方、90%台前半の県もあるのです。
敷設した光ファイバを今後どう維持していくかも極めて大事な課題だと捉えています。残り0.3%の整備に向けても、維持コストの問題は重要です。光ファイバを整備するにあたっての支障の1つが、その維持にかかる費用だからです。
そこで今、光ファイバの維持コストに目配りする制度として、有線ブロードバンドサービスのユニバーサルサービス化の検討を進めており、できるだけ早期に国会での成立を目指したいと考えています。
――電話のように、誰もが等しく受益できるサービスになるのですね。
二宮 今や光ファイバは、テレワークや遠隔医療、遠隔教育などを支える極めて重要なインフラです。そのため電話と同じく、有線ブロードバンドサービスも電気通信事業法の中で「基礎的電気通信役務」に位置付けたうえで、交付金制度を作ります。交付金は、無線も含む全国のブロードバンド事業者が負担し、高コストエリアの事業者を支援します。交付金の規模は、現時点では年間約230億円と試算しています。
――ユニバーサルサービス化で、世帯カバー率100%も実現できそうですか。
二宮 経済合理性を考えると、100%はなかなか難しいのが実状です。2030年までに99.9%という目標を持って整備を進めていきます。最後の0.1%に関しては、携帯電話のブロードバンドサービスで補完することになるでしょう。