インフラ部門は分離すべき電話局や基地局は“アセットヘビー”なので、ROA(総資産利益率)を改善し、設備を軽くしたいと考えている通信事業者はこの方向性を嫌がるかもしれない。
しかし、データセンターの歴史を振り返ってほしい。中途半端にハウジング/コロケーションとクラウドのバンドルを目指すよりも、ハウジング/コロケーションに特化したEquinixやDigital Realtyが、AWSやAzureと棲み分け、成長を遂げていることを忘れてはならない。
もちろん、単に場所を貸すだけでなく、設備や電源等の保守・運用も行う。カーボンニュートラル時代を迎え、再生エネルギーの活用ノウハウも求められる。ここを徹底的に極めるために、デジタル技術を活用する。電力マネジメントにも保守・運用の効率化にもAIやアナリティクス、つまりDXが必須だ。
ROAの改善という観点でも、インフラ部門は本体の通信事業から早く分離し、水平分業型のインフラに特化した事業体とすべきである。こうした事業体には機関投資家が喜んで資金提供するだろう。
米国ではAmerican Tower、欧州ではCellnex Telecomといった基地局シェアリングの専業会社がどんどん成長している。
日本にもJTOWERというインフラ専業会社が出てきたが、まだまだ規模は小さい。大手通信事業者がインフラ部門を分離して、携帯電話事業者4社のインフラを全部請け負う。RANとエッジはスマートシティのインフラにもなりうる。通信インフラは電力や交通インフラとの関係性も強いので、ここを押さえておけば、スマートシティの時代に面白いことができるはずだ。
また、基地局シェアリングのノウハウを蓄積して、グローバルに出ていく。American Tower、Cellnex Telecom、さらにマレーシアのedotcoも他国のインフラを買収するなどして多国籍展開している。こうした基地局シェアリング会社が次に考えているのがエッジデータセンターの買収だ。エッジコンピューティングのノウハウを身につけて、基地局の近くにコンテナ型のエッジデータセンターを置くようなケースがちらほら出てきている。
通信事業者が水平分業化していく流れは止められない。それでも分離したインフラ会社、残った通信事業者の企業価値の総和が高まれば、それは社会にとってプラスになるはずだ。(談)