「LTEとも五分以上に戦える」
WiMAXとのデュアルサービスの導入は、KDDIの事業戦略上、重要な意味を持っている。1つは、これがイー・モバイルのDC-HSDPAやNTTドコモのLTEなど他社の40Mbpsクラスのデータ通信サービスへの対抗策となることだ。例えば同じく3Gでエリアを補完するドコモのLTEの場合、2012年末時点のサービスエリアは人口カバー率で40%程度にとどまる。これに対してWiMAXの人口カバー率はこの時点で90%超となることが見込まれている。五分以上の戦いが期待できよう。
もう1つ、重要なポイントといえるのが、KDDIはこのサービスを導入によりPC向けデータ通信サービスのトラフィックをWiMAXに振り向けることができることだ。KDDIのCDMA2000ネットワークはドコモのW-CDMA/HSPA網に比べ容量が小さく、これが映像系サービスやスマートフォンの展開のネックとなっていた。今年に入ってKDDIは新800MHz帯の基地局の増設を進めており、これを背景に年末からスマートフォンなどの展開を本格化、巻き返しにでると見られるが、WiMAXとのデュアルサービスの導入で、ネットワークにさらに余裕が生まれるのだ。
さらに、デュアル端末の多様化も期待される。DATAシリーズの技術を横展開することでモバイルルーターなど多様な製品の商品化が見込まれるのだ。特に注目されるのが、デュアルサービスに対応したスマートフォンの投入である。KDDIと同様WiMAXとCDMA2000のデュアルサービスを提供している米国3位の携帯電話事業者スプリント・ネクステルは、今年6月にWiMAXとCDMA2000のデュアルモードのAndroid端末「HTC EVO 4G」を発売、好評を得ている。
米スプリント・ネクステルが北米で展開するWiMAXとCDMA2000のデュアルモードAndroid端末「HTC EVO 4G」 |
この種の端末をKDDIが導入すれば2011年にドコモが投入を予定しているLTEハンドセットの対抗馬となり得る。こうした展開を図る上で、追い風となりそうなのがKDDIが基地局の整備を急ピッチで進めている新800MHz帯が北米の周波数プランと整合していること。米国と同一仕様の端末が日本にも容易に導入できるのだ。
KDDIでは具体的な製品展開は未定としているが、北米仕様の4GスマートフォンはKDDI巻き返しの「切り札」としての可能性を秘めているといえそうだ。