<特集>ネットワーク未来予想図20225Gに超セキュア暗号通信 量子ネットワーク時代が幕開け

原理的に盗聴が不可能な究極のセキュリティ技術「量子暗号通信」商用化の足音が聞こえてきた。先陣を切ったのは英BTだ。5G網へ量子暗号を実装する動きも始動し、量子通信時代がいよいよ幕を開ける。

2021年10月、英国の通信事業者BTと東芝が量子暗号通信の商用向けメトロネットワークをロンドンに共同構築すると発表した。

企業・政府機関等に超セキュアな通信サービスを提供することを目指したもので、まずは機密性の高い通信を必要とする顧客企業に対して、商用環境で量子暗号通信の性能や効果を試せる実証の場として本ネットワークを提供する。東芝グループで量子暗号通信事業を行う東芝デジタルソリューションズ(東芝DSL)ICTソリューション事業部 QKD事業推進室 シニアフェローの村井信哉氏は、「トライアルユーザーを巻き込み、事業としての成功モデルを探していく」と、社会実装へ向けた大きな一歩だと強調する。

東芝デジタルソリューションズ ICTソリューション事業部 QKD事業推進室 シニアフェロー 村井信哉氏
東芝デジタルソリューションズ ICTソリューション事業部 QKD事業推進室 シニアフェロー 村井信哉氏

理想的な環境で実装モデル探す両社は2020年時点で、2カ所の商用サイト間を結ぶポイントツーポイントの量子暗号通信リンクをすでに構築していた。それを今回、複数顧客にサービス提供するための商用ネットワークへと拡張する。

歴史的金融地区であるシティ・オブ・ロンドン、ウォーターフロント再開発地域のドックランズと、郊外へ伸びる高速道路沿いのサイトを結ぶ量子暗号通信の専用網を構築。BTの既存のネットワーク運用管理システムで統合運用する計画だ。

ロンドンには金融機関や法務機関など非常に機密性の高いデータを扱う顧客が密集しており、量子暗号サービスの実証には理想的な環境だ。ここでニーズを見極め、英国全土への商用展開を目指す。量子鍵配送システム等を提供する東芝DSLは、「モノ売りだけで終わる考えはない。BT等のパートナーとどう組むか、バリエーションもいろいろある」と村井氏。本実証を通して実装形態とビジネスモデルの検討を進める。

商用サービスの開始時期は現時点で決定していないが、「世の中にまだ存在しないサービスなので、まずは実証を通して我々の想定とユーザーが考える使い方とのギャップを埋め、事業モデルを探す。目途が立ち次第、商用転換していく」という。

月刊テレコミュニケーション2022年1月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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