<特集>ネットワーク未来予想図2022周波数共用が3月実用化 ソニーと三井物産は技術を海外展開

異なる無線システム間で地理的・時間的に周波数を共用する「ダイナミック周波数共用」が、2021年度末に実用化される。周波数のひっ迫は世界共通の課題となっており、共用技術の海外展開も進んでいる。

5G時代を迎え、より多くの周波数が必要となるなか、2021年度末に「ダイナミック周波数共用システム」が実用化される。

ダイナミック周波数共用システムとは、既存の無線システムが利用していない地域や時間帯に、他の用途で同一周波数を使用することを可能にする仕組みだ。

従来、同一周波数を異なる無線システムで共用する場合、相互に電波干渉が生じないよう地理的に十分な離隔距離を確保する「静的な共用」が行われていた。しかし、昨今の急激な移動通信トラフィックの増加とともに周波数のひっ迫度は増しており、これまで以上に周波数の効率的な利用が不可欠となっている。そこで総務省は、その時々の実際の地理的・時間的な運用状況を考慮した動的な共用(ダイナミック周波数共用)の検討を進めてきた(図表1)。

図表1 ダイナミック周波数共用のイメージ

図表1 ダイナミック周波数共用のイメージ

今回、動的な共用が可能となるのは2.3GHz帯だ。

2.3GHz帯は元々、放送事業用無線局(FPU)に割り当てられており、主にマラソンや駅伝などロードレースや報道の中継に用いられている。24時間365日、電波を利用するわけではないため、白羽の矢が立った。

2.3GHz帯の電波利用に際しては、一次利用者である放送事業者が、同帯域で共用を行う二次利用者である携帯電話事業者に優先する。携帯電話事業者は、放送事業者の無線局の運用に有害な混信を生じないよう、「ダイナミック周波数共用管理システム」を用いて基地局等の運用を行う必要がある。

ダイナミック周波数共用管理システムでは、放送事業者が、使用周波数や場所、日時などFPUの運用計画を入力すると、あらかじめ携帯電話事業者が利用申請していた携帯電話基地局と共用可能かどうかを判定する。FPUの干渉範囲内に携帯電話基地局がある場合は、FPUの運用時間帯に合わせて、その基地局に停波指示を出す。これら一連の作業はすべて自動で行われる(図表2)。災害発生時など、放送事業者がFPUを緊急報道で利用する際は、放送事業者が運用計画を登録してから1時間以内に、携帯電話事業者は停波しなければならない。

図表2 2.3GHz帯ダイナミック周波数共用の運用スキーム(画像クリックで拡大)

図表2 2.3GHz帯ダイナミック周波数共用の運用スキーム

さらに、災害でダイナミック周波数共用管理システムが被災する可能性も考えられることから、「管理システムが停止した場合にどうするかといったBCP対策について、放送事業者や携帯電話事業者、管理システムを運用する電波有効利用促進センターも交えて、最終調整している」と総務省 総合通信基盤局 電波部 電波政策課 周波数調整官の宮良理菜氏は説明する。

月刊テレコミュニケーション2022年1月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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