<特集>5Gインフラ ディープガイドvRANの最難関へ挑め SmartNICが変えるテレコムインフラ

LTEコアから始まった仮想化/クラウド化の流れは、5G時代にRANへと波及する。キャリアインフラの変革は今まさに「完全クラウド化」への最後の関門に差し掛かった。焦点は「DU仮想化」だ。

仮想化RAN(vRAN)──。5Gインフラの世界で今、最も注目されているキーワードだ。

RANのオープン化を推進するO-RAN Allianceにおいても、vRANが大きな焦点となっている。世界で初めて5GにおいてオープンRANを実用化したNTTドコモは、2021年2月にオープンRANの海外展開を目的とする「5GオープンRANエコシステム(OREC)」を発足。特にフォーカスする領域としてvRANを挙げ、2022年度の商用化を目指している。

仮想化コアの成功が基盤にこのvRAN実現のキーデバイスが「アクセラレーター」だ。

vRANは、COTSと呼ばれる汎用サーバー上で仮想化基盤とRANソフトウェアを稼働させることで実現するが、COTSのCPUのみでは高負荷なRAN処理に対応できない。そこで、ネットワーク処理に特化したプロセッサー/ソフトウェアを搭載したアクセラレーターカードをCOTSに挿入し、CPUが苦手とする処理をオフロードさせる。先述のORECには、このアクセラレーターとして使うSmartNICを開発するインテル、エヌビディア、ザイリンクスが参加する。

COTS+アクセラレーターを用いるこの構成は、LTE時代に始まったモバイルコア(EPC)の仮想化でも威力を発揮してきた。CPU負荷の高いパケット転送処理等をオフロードする技術が確立されたことで、コア領域でNFV(ネットワーク機能仮想化)が普及。日本ではドコモが2016年3月に仮想EPCの商用運用を開始し、早5年が経過している。インテル 新規事業推進本部 クラウド・通信事業統括部長の堀田賢人氏は、「マルチベンダーのクラウド環境を運用するための知識・ノウハウを養い、キャリアグレードまで叩き上げるのに5年かかったが、コアは仮想化がデフォルトになりつつある」と話す。

5Gでは、これがもう一段階進歩する。LTEとは異なり、5Gコアは“クラウドが前提”だ。現状、5GネットワークはLTEコアと5G RANを組み合わせたNSA(ノンスタンドアロン)構成だが、これが5Gコアを使うSA(スタンドアロン)へ移行する際にクラウド化が一気に進む。「日本の事業者はほぼ仮想化を前提にSA化を進めていて、グローバルでもSAでフル仮想化する流れが見えてきた。インテルでは、2025年までにコアの85%以上が仮想化されると見込んでいる」(堀田氏)

月刊テレコミュニケーション2021年9月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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