長年、エリクソンやノキア、ファーウェイといったグローバルメガベンダーが主導してきた通信インフラ市場に変化が訪れている。
大きなきっかけとなったのが、2018年2月のO-RAN Allianceの設立だ。
NTTドコモをはじめ海外の主要オペレーターがリードする同アライアンスの狙いは、基地局装置間のインターフェースのオープン化により、単一ベンダーによる垂直統合型からマルチベンダー化への転換を図り、柔軟な機器調達・構成を実現することだ。
また、楽天モバイルの完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワークに象徴されるように仮想化も1つの潮流だ。仮想化が進展すると、汎用サーバー上で多様なソフトウェアを動作させることになるため、特定ベンダーに縛られない構成が可能になる。
このようにマルチベンダー化が進むなか、米マべニアや米アルティオスターといった新興ベンダーの存在感も高まっている。
マべニアはここ数カ月だけでも、ドイツテレコムの商用プロジェクト「O-RAN Town」向けにコンテナ化されたCU/DUをソフトウェアとして提供したほか、仏オレンジの5G SA型エンドツーエンドクラウドネットワーク試験用にオープンRANソリューション「MAVair」が採用された。
アルティオスターは、楽天の完全仮想化ネットワーク構築でその名を国内でも知られるようになったが、海外では昨年以降、テレフォニカドイツやテレフォニカUKのオープンRAN実証実験にRANソフトウェアを提供している。
“ファーウェイ後”を狙う富士通オープン化・仮想化の流れは、グローバル市場でわずかなシェアしか持たない国内ベンダーに好機をもたらしている。
富士通は2020年7月、米国でMNOとして新規参入する衛星放送事業者DISH Networkの5G SAネットワーク構築に向けて、デュアルバンド対応RUおよびトリプルバンド対応RUの2機種が選定された。
「牙城を守らなければならないメガベンダーと違って、我々は失うものはない。RU以外にCU/DUも開発しており、必要とされる世界のオペレーターに提案していきたい」と富士通 モバイルシステム事業本部 本部長代理の関野徹氏は意欲を見せる。
富士通 モバイルシステム事業本部 本部長代理の関野徹氏
同社がターゲットとしているのが、「Untrusted Vendor(信頼できないベンダー)」が排除された市場だ。
米中関係の悪化に伴い、米国政府はファーウェイなど中国ベンダーの機器・サービスを使わないことを自国だけでなく同盟国にも求めている。「こうした市場に向けて、鋭意活動を行っている」(関野氏)という。
NEC ネットワークサービス企画本部 シニアマネージャーの久嶋努氏も「インターフェースのオープン化で可能性が広がる。Massive MIMOなどの得意分野から海外に参入する機会が生まれるのではないか」と前向きに捉える(図表1)。
NEC ネットワークサービス企画本部 シニアマネージャーの久嶋努氏
図表1 オープンエコシステムの形成/O-RAN