<特集>ローカル5G NEXTローカル5Gの現在地と行方 誰でも使える時代はすぐそこに!? 

ローカル5G普及の準備が整った。世界に先駆けて制度設計が完了。基地局等の機器調達・コストの課題も解消に向かっている。今秋から来年にかけて、いよいよ実用化フェーズへと突入する。

「ローカル5Gはこれまで資金力のある限られた方々が使うものだったが、それ以外の企業でも簡単に導入できるようにするためのベースは整ってきている」

そう話すのは、これまで数々のローカル5G導入プロジェクトに関わり、免許申請やネットワーク設計・構築を手掛けてきたスリーダブリュー 代表取締役の植田敦氏だ。最大の課題である機器調達・システム構築コストが低廉化し、目的や用途に応じて選べる環境が整ってきたという。

あわせて、ローカル5G導入を支援するSIerにも電波エリア設計・構築のノウハウが蓄積されてきた。ローカル5Gはいよいよ飛躍のときを迎えようとしている。

スリーダブリュー代表取締役の植田敦氏
スリーダブリュー代表取締役の植田敦氏

世界最先端の制度が完成転機となったのは、やはり2020年末の制度改正だ。

ローカル5Gの免許制度は2019年末にミリ波帯の100MHz幅(28.2-28.3GHz)で始まった。システム構成も、制御信号用のアンカーとしてLTEを使うノンスタンドアロン(NSA)のみと、“仮スタート”の状況だった。

本番を迎えたのは2020年12月だ。Sub6帯を含めて周波数帯が12倍に拡張(4.6-4.9GHz、28.2-29.1GHz)。通信事業者が展開する“公衆5G”よりも早く、アンカーが不要なスタンドアロン(SA)方式も使えるようになった。

クアルコムジャパン 標準化本部長の城田雅一氏は、「日本は世界でも制度整備が進んでいて、ビジネスをするのにとてもよい環境だ。高い周波数帯を使うため、展開に時間がかかるのは仕方がないが、日本はミリ波についてもリーディングカントリーと言われる状況にある。ローカル5Gに適した製品さえ出てくれば、どんどん広まっていく」と期待する。

製品については後述するが、制度整備のポイントとして同氏が強調するのが「Semi-synchronous TDD(準同期TDD)」だ。公衆5Gとの干渉を生じさせずに、TDD(時分割多重)の下り/上りリンクの比率を変えられる制度を「世界で初めて導入した」。

これは、産業ユースケース開拓の大きな後押しとなる。準同期TDDは、公衆5Gの同期TDDとスロットのタイミングを合わせたまま上り/下りスロットのパターンを一部変更するもので、「上りの比率が大きいTDD」を実現しやすくなるからだ。

公衆5Gは現状、下りの比率が大きく、高精細映像を高速にアップロードしたいといった用途に対応しづらい。公表されている5Gの実効速度では、上りは下りの15%程度だ。ローカル5Gでは、ニーズに合わせて上り優先にも変更できる。

加えて、ローカル5Gには通信遅延や同時接続数といった他の要件、そしてシステム構成も含めて、利用者好みにチューニングできる利点がある。図表1のように産業向け5Gの様々な用途を開拓する道が拓ける。

図表1 ローカル5Gの利用シナリオ

図表1 ローカル5Gの利用シナリオ

月刊テレコミュニケーション2021年7月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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