スマートスタジアムのインパクト 5G・ICTで高度化する体験とビジネス

スマート化の波は数年前からスタジアムにも来ていたが、今、本番を迎えつつある。5GやWi-Fi、ICTの活用は観戦体験の高度化に限らず運営側にも大きなメリットがあり、まちづくりにまで発展する可能性もある。

オフィスや工場、建設現場など様々な場所でICTを活用したスマート化が始まっているが、その潮流は数年前からスタジアムやアリーナ、ドーム、体育館などにも押し寄せている(以下、本記事では便宜的に「スタジアム」と統一して表記)。

「2016年に内閣府が発表した『日本再興戦略2016』で、スポーツ産業を2025年までに15兆円に拡大する目標が掲げられた。また、スポーツ庁がスタジアム・アリーナ改革を打ち出したことで、日本でもスマートスタジアムの流れが本格化していった」とシスコシステムズの赤西治氏は振り返る。シスコは日本では2015年頃からスタジアム向けに提案を開始。当初はスタジアム向けに設計されたWi-Fiソリューションの提案が多かったという。

KDDIは5G元年に向けて準備を始めた2019年頃からスタジアム向けの事業を本格化させた。KDDIの繁田光平氏は、「5Gはすぐにあらゆる場所で使えるようになるものではなく、やはり人が多く集まるところから優先的に設置されていく。KDDIはエンターテイメント寄りの発想が強いので、単に人が多いだけでなく、スタジアムのような意図して人が集って盛り上がるような場所から設置し、取り組みを進めてきた」と話す。

KDDI パーソナル事業本部 サービス統括本部 副統括本部長 繁田光平氏
KDDI パーソナル事業本部 サービス統括本部 副統括本部長 繁田光平氏

コロナ禍で順番が変わったしかし新型コロナウイルス感染症の流行以降は、緊急事態宣言の発出などによって試合が開催できなくなり、再開しても無観客や人数を制限することになった。このため、今は自宅観戦のスマート化にも舵を切っている。

例えばKDDIは2020年8月、以前からパートナーシップを結ぶ横浜DeNAベイスターズとともに、Cluster社のバーチャルSNS「cluster」上に横浜スタジアムを再現した。ユーザーがスマホやPC、VRゴーグル等を使ってバーチャルハマスタにアバターで来場し、試合の中継を観られるというものだ。反響は大きく、約3万人が参加した。

シスコは昨年9月に、Webex上でファンとOB選手が直接交流しながら「パ・リーグTV」の試合観戦を楽しめるオンラインイベントを開催している。

「本当のところ、『バーチャルハマスタ』は2~3年後ぐらいに実施する構想だった。スタジアム現地での取り組みからスタートさせ、次にオンライン、そして最後にオフラインとオンラインをマージするのが当初の予定だ。しかしコロナによって現地の取り組みができなくなったので、オンライン、現地、マージの順番でやることになった」(繁田氏)

月刊テレコミュニケーション2021年6月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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