Beyond 5G/6Gの重要なターゲットの1つである上り速度の向上だが、実はそのカギはユーザーが利用する「端末」が握っている。「スマホなどで上り通信が遅い理由の1つは、人体への影響を考慮して出力が250mWまでと決まっているからだ」と指摘するのはKDDI 技術企画本部 副本部長 兼 KDDI総合研究所 先端技術研究所長の小西聡氏だ。筐体サイズによる搭載アンテナ数の制約などもある。
そこでKDDIが6Gで構想しているのが「仮想化端末」という仕組みだ。これは複数の端末のアンテナを仮想的に束ね、あたかも1つの端末かのように扱う技術である。これにより、送信電力の制約を克服し、上り速度の向上を実現する。
例えば、自動車で移動中は、自動車に搭載された高出力アンテナも一緒に用いてスマホのデータ通信速度を向上させる(図表)。「電力の配分などの計算は基地局で行うケースや、1台のマスターとなる端末が行うケースなどが考えられる」と小西氏は語る。
図表 仮想化端末のコンセプト
基地局を使わない6Gも6Gでは上り速度に加えて、多数接続性能も向上させる必要がある。IoTデバイスの飛躍的増加が予想されるからだが、「すべてのデバイスが基地局と個別に通信したら、膨大な数のデバイスがキャリアネットワークに同時につながることになる。何も対策を行わなければ、加入者情報を管理しているデータベースは“爆発”してしまうだろう」とノキアソリューションズ&ネットワークス CTOの柳橋達也氏は警鐘を鳴らす。
そこでノキアが検討しているのが「サブネットワーク」の導入だ。すべてのデバイスが基地局と直接通信するのではなく、あるデバイスが代表して基地局と通信する。「例えば、自動車内部の部品同士の通信にも6Gを使い、代表する1つのデバイスだけが基地局と通信する。この形であれば、登録デバイス数の爆発を抑制できる」。
「五感の伝送や多数のロボットを協調制御するような仕組みを実現するには、複数の進化が必要になる」。KDDI総合研究所 取締役執行役員副所長木村寛明氏はこう話すが、仮想化端末にサブネットワークと今、多様な進化の芽が育ち始めている。
KDDI総合研究所 取締役執行役員副所長 KDDI research atelierセンター長 木村寛明氏