NTTとスカパーJSATホールディングスは2021年5月20日、新たな宇宙事業のための業務提携契約を締結したと発表した。
(左から)澤田純NTT社長、米倉英一スカパーJSAT社長 |
「これからの社会を持続可能なものとするには、宇宙が鍵になると考えている。環境問題やパンデミックなど、予測困難な課題の解決には地上からだけでは難しい。宇宙に広がる新たなネットワークコンピューティングインフラの構築に挑戦していきたい」。NTTの澤田純社長は、提携の背景をこう説明した。
NTTのネットワークおよびコンピューティングインフラと、スカパーJSATの宇宙アセット・事業の連携により、宇宙統合コンピューティング・ネットワークを提供する。具体的には、地上約20kmの成層圏を飛行するHAPS、宇宙空間の低軌道衛星、静止軌道衛星などを統合。それらと地上を光無線通信ネットワークで結びコンステレーションを構成し、分散コンピューティングによって様々なデータ処理を高度化する。また、地上のモバイル端末へのアクセス手段を提供し、超カバレッジを実現する。
宇宙統合コンピューティング・ネットワークが目指す世界観 |
スカパーJSATは、衛星通信事業に加えて、近年は宇宙インフラから得られるデータを利活用するスペースインテリジェンス事業を強化している。そうした中で「宇宙空間にもインテリジェンスを備えた技術が必要になるとIOWN構想に賛同しており、IOWN Global Forumに参加してグローバルに協力していくことを考えている」とスカパーJSATの米倉英一社長は述べた。
一方、NTTはIOWNによるICTインフラサービスを、地球上だけでなく宇宙空間全体に拡大していくIOWN Space Computing構想を発表している。
NTTによると、光電融合技術によって作られるデバイスは低電力消費のため、衛星の限られた電力の中での計算量を増やすほか、宇宙船による影響を受けにくいといった特性がある。さらに、分散処理コンピューティングにより、宇宙で処理可能なデータ量や即応性を飛躍的に向上させることができるので、データが発生する宇宙空間でそのままエッジ処理を行い、結果をデータとしてリアルタイムに地上に送ることが可能になる。「IOWNにより衛星インフラは、これまで宇宙で構築できなかったインフラになる」と澤田社長は強調した。