NTT R&Dフォーラム2020 connect 基調講演NTT澤田社長「IOWNでゲームチェンジ」 光電融合デバイスは2年後

IOWNの目的はゲームチェンジ――。2020年11月17日に開幕したNTT R&Dフォーラム2020 connectの基調講演「Road to IOWN」で、NTTの澤田社長はIOWN構想の意義と実現に向けた取り組みを語った。

IOWN(アイオン:Innovative Optical & Wireless Network)は、NTTが2019年に打ち出した次世代ネットワーク/コンピューティング構想だ。2030年を目途に、従来とはまったく異なるコンセプトによる情報通信基盤を実現しようとするもので、通信ネットワーク基盤のオール光化、デジタルツインの超高度化などを目指した研究開発が進められている。


IOWN実現を通して日本の自立、さらに世界への貢献につなげたいと澤田社長は話した

澤田社長が「ゲームチェンジ」を強調するのは、IOWNの実現を、日本の情報通信産業が国際競争力を備える契機としたいとの思いからだという。国を超えた特許やライセンス等の取引を示す技術貿易収支において、日本は産業全体では2008年から2019年まで黒字を継続しているが、「情報通信はずっとマイナス。海外の技術を入れて日本で利用している」(澤田氏)状態が続いている。

これを変えるには、まさに発想の転換が不可欠だ。新たな発想で情報通信基盤を根本から作り直そうとするIOWN構想は、そのベースとなり得る。「日本としては、次の技術でゲームチェンジを図っていくべき」と澤田氏は話した。


NTT持株の澤田純社長

リアル世界を再現する「4Dデジタル基盤」実用化へ
そのIOWN実現に向けて、NTTはどのような取り組みを進めているのか。基調講演では、最新の研究成果と今後の方向性が語られた。そのうち主なトピックを紹介しよう。

最初が「O-RAN」だ。移動体通信システムのRAN(無線アクセスネットワーク)をオープン化する取り組みで、NTTドコモをはじめとする携帯キャリア、ならびに基地局装置等を提供するベンダーがその推進団体「O-RAN Alliance」を立ち上げている。

NTTは2020年7月に、このO-RAN推進を目的としてNECと業務資本提携を発表。基調講演にはNECの新野社長がビデオメッセージを寄せ、「NTTとともにO-RANを推進し、世界トップシェアを目指したい」と意気込みを述べた。

IOWNの主要要素の1つである「デジタルツインコンピューティング(DTC)」を体現する「4Dデジタル基盤」も注目される。


4Dデジタル基盤のイメージ図(NTT発表資料より)

これは、高精度な3D都市空間情報や既存の地図データ、町中を行き来する人やモノなどのセンシングデータといった現実空間の写像を複数組み合わせて統合し、未来予測等に活用しようとするCPS(サイバーフィジカルシステム)のプラットフォームのこと。3Dの空間情報に「時間」を加えて4Dと表現している。

NTTはこれを様々な産業分野へ提供する計画だ。「街をサイバー空間上に構築して、未来予測などをする。スマートシティの起点として使われていくのではないか。2021年度から実用化していく」と澤田氏は話した。

また、ヒトの身体・心理の精緻な写像を作り、これを基に心身の状態の未来予測などを行う「バイオデジタルツイン」の構想も披露。モノ・コトだけでなくヒトのデジタル化も追求し、医療分野への貢献を目指す方針を示した。

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