<特集>5Gこれからどうなる?米欧中韓は2020年内にSA開始

世界では、すでに全国に5Gエリアが拡大していたり、SA(スタンドアロン)導入が始まっている国もある。グローバルモバイルサプライヤー協会によれば、9月時点で世界44カ国・101事業者が5Gを商用化している。

米ベライゾンは2018年10月に28GHz帯のFWAを、2019年4月にスマホ向けのサービスを開始し、同年末には60都市へサービスを展開している。現在は、遅延20msを実現するMECサービスの提供も始めている。

T-Mobile USAにも注目だ。LTE帯域の600MHz帯をNR化し、全米で使用している。また、8月にはSAの商用化も発表。シスコシステムズとノキアのコア設備、ノキアとエリクソンの基地局で構成しているという。サムスン電子製のスマホ「Galaxy S205G」等のSA対応端末(ソフトウェアアップデートが必要)で利用できる。

韓国は2020年7月までに3.5GHz帯で85都市にカバレッジを拡張、3キャリア合計で28万超の基地局を設置した。B2B向けを軸に28GHz帯も展開を始めている。エリクソン・ジャパンCTOの藤岡雅宣氏によれば、「2020年第3~4四半期にはSAベースの展開も始まる」。

また、MECも「国内10~20カ所に設置している。数を増やし、全国どこでも20ms以下程度の低遅延サービスを提供する計画だ」(同氏)

エリクソン・ジャパン CTO 藤岡雅宣氏
エリクソン・ジャパン CTO 藤岡雅宣氏

中国は年末に60万基地局中国は2020年6月末で基地局数が41万に到達(3キャリア合計)。2020年末には60万局、加入者は1億人を超える見込みだ。これまではNSAベースで展開しており、深セン市などではSA化が始まっている。

注目すべきは、インフラシェアリングだ。中国移動は単独で、中国電信と中国聯通は共同でRANを展開している。なお、中国移動は2.6GHz帯、中国電信と中国聯通は3.5GHz帯で本年末にそれぞれ30万局ずつの設置を目指す。

欧州はスイスと英国が先行している。

スイスコムはLTE帯域のNR化を推進し、2019年末にすでに90%の人口カバレッジを達成した。藤岡氏によれば、同一周波数帯で4Gと5Gを柔軟に切り替える「DSS(ダイナミックスペクトラムシェアリング)が早期のカバレッジ拡大に効いている」。また同国では、FWAを中心に5Gを展開するSunriseもおり、2020年6月時点で554の市町村においてサービスを提供している。

英国では、Vodafone UKがSAの展開を始めている。コベントリー大学を“ショーケース”として医療関係者のVR教育に用いるといったトライアル的な活用からスタートした。

図表 世界の5Gスタンドアロン(SA)導入時期

図表 世界の5Gスタンドアロン(SA)導入時期

中東もカタールのOoredoo、UAEのEtisalat、サウジアラビアのSTC、Mobily等が3.5GHzまたは2.6GHz帯を使用して5Gを展開している。サウジのSTCは約2000の基地局を設置しており、LTE帯域のNR化も予定している。

なお、新型コロナ感染症の影響により、欧州などで5G周波数割当が遅延し、進展に遅れが出る可能性があるという。ただし、在宅勤務等の影響でモバイルトラフィックが増加しており、「これが5Gの展開、特にFWAを促進する可能性がある」と藤岡氏は指摘する。エリクソンの調査では、遠隔医療やオンラインショッピング、ストリーミングでの5Gに対する期待が世界的に広がっており、5G FWAへの関心も高まっているという。

月刊テレコミュニケーション2020年11月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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