FPGAやSoCを開発・製造するザイリンクスは、2018年から5G NR(New Radio)に対応する「Zynq RFSoCシリーズ」の本格生産を開始した。
4GHzまでの周波数をサポートするこの第1世代のSoCは、韓国の5G展開に使われた基地局設備などで採用。さらに2019年には、日本や中国等で使われる帯域をサポートする第2・第3世代製品を相次ぎ発表している。第3世代は、2020年11月から本格生産を開始する計画だ。
5G NRに対応する「Zynq RFSoCファミリー」の進化
そして10月28日には、3GPPで先頃策定が完了した5Gの最新仕様であるリリース16に対応する新世代SoC「Zynq RFSoC DFE(デジタル フロントエンド)」を発表した。ジル・ガルシア氏はこの新たなSoCについて「これから出てくる新たな5Gの要件に対応することを念頭に開発した製品だ」と話した。「柔軟性とコストのバランスを最もうまく両立しているチップ」であり、かつ「5Gそのものの進化と歩調を合わせて様々なユースケースに使っていただける」と自信を見せた。
5Gの“第2波”とは?
ガルシア氏が“5Gの第2波”と呼ぶ、リリース16およびリリース17(2020年から標準化作業が開始、2021年に完了予定)に適応するには、具体的に何が必要なのか。同氏が特に指摘したのが「複雑性」の解消だ。
5Gネットワークは4Gと比べて、システムそのものも、その使い方も非常に複雑になる。
リリース15をベースとする現状の5Gは、高速大容量通信(eMBB)に対応したものであり、使い方もスマートフォン向けのワイヤレスブロードバンドサービスにほぼ限られる。一方、リリース16以降はそこに超高信頼低遅延通信(URLLC)や多数同時接続(mMTC)の特性が加わる。ネットワークインフラはより複雑化し、ユースケースも多様化する。
4Gの時代と比較して通信市場は大きく変化するとガルシア氏は指摘する
さらに、無線アクセスネットワーク(RAN)をオープン化するO-RAN Alliance等の活動も進展しており、こうした要素が絡み合うことで、5Gインフラ向けソリューションは劇的に変化していくとガルシア氏は指摘した。通信事業者が求める要件や5Gのユースケースによって、多様な機能・性能を備えるインフラ機器が求められるようになるため、「様々な要件に適応できるチップを使わなければ、そうしたニーズに対応していくことが難しくなる」。
ザイリンクス WWGビジネスリード シニア ディレクターのジル・ガルシア氏
つまり、4G時代と比べると非常に柔軟性に富む市場で、新たなビジネスモデルによる競争が始まるという。5Gインフラ向けソリューションを提供するサプライヤーも、それを用いる通信事業者も「新たなプレイヤーの参入が増えていくだろう」とガルシア氏。実際、日本では楽天が参入し、米国でも衛星放送事業者のDISH Networkが移動体通信事業者としての新規参入を計画。RAN機器やコアネットワークを提供するベンダーについても、新規参入が相次いでいる。