将来の進化へのパス
では、LTE-Advancedはいつ頃、どのような形で実用化されるのだろうか。
まず製品への実装時期については、「2013年くらいにはいくつかの要素技術について搭載が始まるのではないか」(エリクソン藤岡氏)、「標準が確定した後、全部ではないが1年弱程度でベンダーが一部の機能を入れてくる」(NEC宮原氏)と、2013年から2014年頃という予測が多い。LTE-Advancedの仕様は、LTEにさまざまな機能モジュールを追加する形になっている。そのため、実際の実装においても、現行LTEインフラに追加していく形が想定されているのだ。
NECでキャリア向けソリューションを担当するネットワークプラットフォーム事業本部グループマネージャーの後川彰久氏は「LTE-Advancedの機能の多くは、既存基地局のソフトウェアアップグレードで導入できる可能性が高い」と見る。LTE-Advancedの個別機能の実装を「LTE-Advancedの導入」と見なせば、2013年にはLTEは4Gに進化するということもできる。
とはいえ、4Gというからには、やはり1Gbps、少なくとも600Mbpsといった現行のLTEを超えたスピードの実現が期待されることだろう。だが、これはかなり先のことになりそうだ。
その理由の1つは、このような高速データ通信の展開にはどうしてもまとまった周波数の確保が必要となるが、現在のところ日本で割り当てが明確になっているのは3.5GHz帯くらいだからである。3.5GHz帯が利用可能になるのは、2014~2015年頃と見られる。ドコモはここに40MHz幅以上を確保し、LTEを導入する意向を示している。
当然この時点でのシステムはLTE-Advancedに準拠したものになる。前述の通り、40MHz幅が利用可能であれば規格上は1.2Gbps対応も可能だ。ただし、8×8MIMO対応端末の開発時期などを考慮すると、2015年時点での1Gbps達成は現実的ではないだろう。
一方、2GHz帯で展開されるLTEサービスのデータ通信速度は、2015年時点で100Mbps程度と予想される。LTE-Advancedによるサービスも20142015年の開始当初はLTEと同じか、現行の2×2MIMOのLTEにCAを適用し40MHz幅で下り300Mbpsを実現するといった現実的なものとなる可能性が高そうだ。ドコモの尾上氏も、サービス展開は未定としたうえで「当初からいきなりフルスペックの製品が出てくるわけではない。LTE-Advancedの導入は、むしろ将来への進化のパスが用意されたとご理解いただきたい」と語る。
ここまで見てきたように、LTE-Advancedは、LTEのパフォーマンスを大きく向上させる。仮に最大通信速度が当面は現行LTEと同一であったとしても、その意味は非常に大きいものがある。
LTEの改良により、真のモバイルブロードバンドインフラを登場させること――LTE-Advancedの意義は、そこにこそあるといえるだろう。