<特集>2030年のネットワークIOWNが目指す知覚超え オール光がスマート社会の神経網に

家庭に10G光回線が届き、5Gも始まった今、私たちは超高品質な通信環境を手にしている。だが、人類が目指すスマート社会の実現にはまだ足りない。“ヒトの限界”を超える挑戦が2030年に向けて始まった。

我々の生活を支える社会インフラの1つである情報通信インフラ。これを、従来とは全く異なる発想で作り直し、新しい情報通信基盤を実現しようとする挑戦が始まっている。2019年にNTTが打ち出した「IOWN(アイオン:Innovative Optical & Wireless Network)構想」だ。

実現のターゲットは2030年。それに向けて、この1月にはインテル、ソニーと共にIOWN構想を推進するIOWN Global Forum(GF)を設立した。技術開発のロードマップも具体的に示され、IOWNの実現に向けた動きが本格化している。

IOWN構想では、ネットワークから端末までを光のままで伝送する「オールフォトニクス・ネットワーク」や、ネットワークからクラウドまでレイヤをまたがってICTリソースを最適化する「コグニティブ・ファウンデーション」を提唱。さらに、TCP/IPに依らない新たなデータ流通を指向するなど、まさにICT業界におけるパラダイムシフトを目指している。

パラダイムシフトは誰のため?ただ、ここで疑問が湧く。現在のインターネット利用者は世界で40億人を超え、数Gbpsの高速通信がどこでも使える5Gの普及も始まろうとしている。通信ネットワークは飛躍的な進歩を遂げている最中で、なぜパラダイムシフトが必要なのか。

理由を端的に言えば、“ヒトの知覚を越えたシステム制御”を実現するためだ。目的は人類社会の発展にあるが、直接的には人ではなく、“AIが要求するレベルを満たすため”と考えるとわかりやすい。

政府が掲げるSociety5.0のように、人類は今、超高度なAI/IoTシステムを基盤としてサイバー空間と現実世界が融合する社会を目指している。AIが実世界の事象を把握・判断しフィードバックするサイバーフィジカルシステムを超高度化・大規模化したものだ。

社会の隅々まで張り巡らされたセンサーから生み出される莫大なデータを伝送し、処理して実世界に還元する。かつ、持続可能なレベルのエネルギー効率でこれを成し遂げる。このスマート社会の“神経網”には、現在の通信インフラと比較しても圧倒的な性能が求められる。IOWN構想では図表1の通り、伝送容量、通信遅延、電力効率の観点で、現在の100倍以上の性能を目標に掲げている。

図表1 IOWNの目標(2030年までに達成)

図表1 IOWNの目標(2030年までに達成)

これまでのアーキテクチャのまま進化したとしても限界がある。だからこそ、パラダイムシフトを起こす――。これがIOWN構想の発端だ。

月刊テレコミュニケーション2020年8月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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