「多様なデジタル技術が進展しているなかで、5Gは欠けていた最後のピースだ。DX(デジタルトランスフォーメーション)に必要なパーツが、これで揃ったということ」
5G時代が幕を開ける2020年以降の市場トレンドについて述べるに当たり、北氏はそう切り出した。
5Gの特徴とその影響力について同氏がまず強調したのが、IoTとの親和性だ。
野村総合研究所 コンサルティング事業本部 パートナーの北俊一氏
4G(LTE)の時代は多くの「ヒト」がネットワークにつながるという変化を生み出したが、まだつながっていない「モノ」は無尽蔵にある。高速・大容量に加えて超低遅延、多数同時接続といった特徴も兼ね備える5Gは、それらのモノをネットワークにつなげる「IoTを得意とする」。この特性は、「デジタル時代の国際競争の第二幕」において重要な意義を持つという。
5Gはサイバーとフィジカルをつなぐ「スマートパイプ」デジタル時代の国際競争“第一幕”はサイバー空間を舞台とした戦いであり、スマートフォンを中心として生活者の情報をクラウドに吸い上げ、そのビッグデータを価値化する競争が進展してきた。これは「GAFAの圧勝で終わった」(同氏)。
続く“第二幕”では、カメラやクルマ、ドローン、ロボット、センサーなど、スマートフォン以外の多様なデバイスから得られるデータをいかに価値化するかの競争になる。
デジタル時代の国際競争“第二幕”はCPSを舞台に繰り広げられる
この競争は、いわゆるサイバーフィジカルシステム(CPS)を舞台に繰り広げられる。CPSとは、フィジカル空間(実空間、現場)からデータを収集し、サイバー空間において解析した結果をまた実空間や現場にフィードバックすることでサイバーとフィジカルを融合させるもの。北氏はこの2つの空間をつなぐための「スマートパイプが5Gであると捉えている」。
では、この第二幕において日本が他国を凌ぐためのポイントは何か。
北氏が強調したのが「日本の強みである現場力」だ。すでにスマートファクトリーを主戦場として競争がスタートしているが、「現場はまさに宝の山。例えば、熟練工の働き方を画像で解析してフィードバックするなど、日本の現場力を活かして第二幕をなんとか勝利に結びつけていきたい」と話した。