日本の重要課題である“人手不足”。その影響が顕著に出てきているのが、社会インフラの保守・保全の分野だ。豊富な経験と高度なスキルを備えた技術者が高齢化し、作業の担い手が不足。しかも、その貴重な経験・スキルが失われていくケースも少なくない。
この問題は、道路や橋梁等の構造物、水道やエネルギーなどあらゆる領域に及んでいるが、通信ネットワークも例外ではない。日本中に張り巡らされた光ファイバ網は、我々の日常生活と経済活動を支えるとともに、災害発生時には、情報伝達や救助・支援活動を支える命綱の役割を果たす。その通信インフラも早晩、保守メンテナンス技術者の不足に悩まされることは確実だ。
解決策は作業の省人化と、属人化の解消だ。これを圧倒的なレベルで実現しなければならない。それには、保守メンテナンス作業のあり方を抜本的に見直す必要がある。
回線の健全性を遠隔・常時監視 光ファイバ保守が「誰でもできる」
通信事業者をはじめ自営ネットワークを運用する事業者がこの改革を成し遂げることを支援するため、チャレンジを続けている企業がある。光ファイバ回線の遠隔常時監視システム「Primestar VCI」を開発する日立金属だ。
日立金属 機能部材事業本部 電線統括部 鉄道・車両部門 主管の鈴木雄司氏(中央)、電線統括部 電線営業部 鉄道インフラグループ 担当課長の小島洋介氏(右)、エイチ・シー・ネットワークス 営業本部 第二営業部 部長の不破大介氏(左) |
システム名にあるVCIは、「Visual Connection Identifier」の略。その名の通り、コネクティビティを可視化し、通信の健全性を容易に識別できるようにするものだ。ポイントは、“遠隔から常時”監視できること。これにより、作業現場の課題を解消する。
図表1 Primestar VCIの3つの特長
通常、光ファイバのメンテナンスは、技術者を現場に派遣して行う。通信障害が発生した場合は、パッチパネルからファイバを抜き、検査機器で疎通を確認。これを1本ずつ行って問題のあるファイバを特定し、さらに故障箇所を絞り込む。人手と時間のかかる作業だ。
また、検査時はファイバを折り曲げてチェックするため、ダメージを与えてしまう恐れもある。
Primestar VCIは、この現状をガラリと変える。日立金属 電線営業部 鉄道インフラグループ 担当課長の小島洋介氏は、「現場作業員の方々の声を拾って作り込んだ」と話す。
回線の状態を監視ユニットが常時モニタリングして健全性を測定。作業員が常駐する拠点のモニターに、光パワーの変動をリアルタイムに表示するため、検査に人を派遣する必要がない。しかも、熟練技術者でなくとも「誰でも異常が把握できる」(同氏)