遠隔にいる人と、まるで目の前にいるかのような臨場感で会話をする――。SF映画のワンシーンで見た光景が、5Gでいよいよ現実となるかもしれない。
MR(複合現実)とビッグデータを組み合わせたソリューションの開発を手掛けるDataMeshと、携帯販売代理店大手のMXモバイリングはこの7月、NTTドコモの5G検証環境「ドコモ5Gオープンラボ Yotsuya」において「HoloPortation(ホロポーテーション)」の実証実験に成功したと発表した。
HoloPortationのイメージ。実験はNTTドコモの5G検証環境「ドコモ5Gオープンラボ Yotsuya」で行われた
HoloPortationとは、物理的な距離の制約なく、撮影した物体を現実空間に3Dホログラムとしてリアルタイムに投影する技術のこと。実用化するうえで必要となるのが、被写体を高精度で立体的に捉える技術、動作を正確に把握するモーションキャプチャ技術、3Dデータをリアルタイムに伝送するための高速ネットワーク環境だ。
今回の実証実験では、マイクロソフトの「Azure Kinect DK」で人物を撮影、その映像を5Gネットワークで伝送し、MR用ヘッドマウントディスプレイ「Microsoft HoloLens」を通して現実空間にホログラムとして投影した(図表)。
図表 HoloPortationの実証実験の全体イメージ
Kinectはもともとマイクロソフトのゲーム機「Xbox 360」向けに、ジェスチャーや音声認識でデバイスを操作するコントローラーとして開発された。2017年にいったん生産を終了したが、今年2月の「MWC2019」でビジネス向けAIカメラ「Azure Kinect DK」として復活した。
Azure Kinectは、Kinect DKから継承した深度センサーにより、人物や物体を3次元として認識することができる。DataMesh代表取締役の王暁麒氏は、「通常の映像データと比べて大容量の3Dデータの伝送はLTEでは難しかったが、5Gであれば問題なく行えることが実証実験で証明された」と話す。
(左から)DataMeshの鹿島田健将氏、王暁麒氏、MXモバイリングの大野雄吾氏、岩瀬沙羅氏