PoC(コンセプト実証)は、IoT活用のアイデア、コンセプトの実効性を検証するステップだ。本来はプロトタイプ(試作)開発の前段階を指す言葉だが、IoTの取り組みでは試作やトライアルも含めてPoCと呼ぶことが多い。
ここでつまずき、“PoC疲れ”に陥る企業も少なくない。ユーザー側だけでなく、実入りの少ないPoCに付き合わされたSIerが疲弊し、本格導入の見込みが薄い案件を断るケースさえ出てきている。
続出した「出口のないPoC」PoC疲れの原因で最も多いのが次の2つだ。「出口のないPoC」「現場の協力がないPoC」である。
IoT熱が盛り上がるとともに、ITベンダーから「PoCスタートキット」が出回り始めた。センサーと通信機器、データ収集用のクラウド等をセットにしたもので、すぐに使い始められる。
だが、その手軽さが仇となり、「とりあえずデータを取ってみて、その中から価値を見つけよう」と目的が曖昧なままスタートする企業が続出した。出口のない迷路に入るようなもので、よほどの幸運に恵まれない限り成果は得られない。
メソッド1でも述べた通り、IoTプロジェクトの起点はビジネス課題を把握することだ。
PoCでは、それを解決するために必要なデータを取り、加工・分析方法を検討し、その活用法を検証していく。解決すべきビジネス課題と、現場から得られるデータを結びつけるための検証作業であり、課題と目的が明確でないと方向性を見失うことになる。
2つめの現場の協力がないPoCは、現場の事情を理解せずに進める場合に起こりやすい。
実験には、工場の生産ラインや倉庫、店舗等で働く現場作業員・マネージャーの協力が不可欠だ。IoTに取り組む意義と、現場が得るメリットを説明して納得してもらう必要があるが、このプロセスを軽視すると“抵抗勢力”になるリスクもある。