<シリーズ>キャリアネットワークのメガトレンドキャリア網の“機能分離”と“オープン化”

キャリア網を構成するネットワーク機器といえば、これまでは垂直統合型の重厚長大な装置がほとんどだった。これを分解し、オープン化する動きがコアネットワーク全体に広がりつつある。

SDN/NFV技術の普及は、キャリアネットワークの仮想化やオープン化を促進してきた。従来は一体型で提供されていたネットワーク機器をハードウェアとソフトウェアに、あるいは機能ごとに分解し、オープンなインターフェースで制御できるようにすることで、柔軟かつ迅速な構成変更や、コンポーネントごとの個別調達、機能追加などを可能にするのが目的だ。

このディスアグリゲーション/オープン化が先行してきたのは、ルーターやスイッチ等で構成されるIPパケット転送の領域だ。コントロールプレーンとデータプレーンの分離や、ハード/ソフトの分離と仮想化が進展。最近では、ホワイトボックススイッチ等の汎用ハードウェア上でオープンソースのネットワークOSを稼働させる、キャリア自ら新機能を開発して運用するといった取り組みも始まっている。

領域ごとに異なる「バラし方」この動きは他の領域にも広がっている。「ルーター/スイッチ、光伝送、RAN(光アクセスネットワーク)の各ドメインで同時多発的に起こっている」と話すのは、シスコシステムズ GSPSPネットワーキング アンド クラウドアーキテクチャ コンサルティングシステムズエンジニアの児玉賢彦氏だ。

シスコシステムズ GSP SPネットワーキング アンド クラウドアーキテクチャ コンサルティングシステムズエンジニア 児玉賢彦氏
シスコシステムズ GSP SPネットワーキング アンド クラウドアーキテクチャ
コンサルティングシステムズエンジニア 児玉賢彦氏

その“バラし方”と進行度は、ドメインごとに異なる。

ルーター/スイッチの領域ではエリクソンやノキア、シスコといった有力ベンダーも含めて機能分離が進行した。例えば、NTTドコモは2016年からマルチベンダーによる仮想LTEネットワークを運用。NTTコミュニケーションズも、SDNによるネットワーク制御の領域をデータセンターからWANに拡大しようとしている。

一方、ソフトウェアが担う部分が少ない光伝送では、ハードウェア内での機能分離が始まっている(図表1)。これにより、光伝送システムを構成するトランスポンダー※1やROADM※2等のコンポーネントを分離し、技術進化の早いトランスポンダーだけを取り替えるといった柔軟な運用が可能になる。

オープンコミュニティのONF(OpenNetworking Foundation)で、光伝送の機能分離を推進するプロジェクト「Open and Disaggregated Transport Network(ODTN)」を主導するNTTコミュニケーションズ 技術開発部 担当部長の柏大氏は、「新しい技術や機能をすぐに使えるようにすること、パーツの選択肢を増やして使い方に応じて変えられるようにすることが狙い」と語る。

※1:トランスポンダー
受信信号の中継送信や電気/光信号の相互変換等を行う中継機

※2:ROADM
光信号の挿入や分岐を行う多重化システム

図表1 トランスポートネットワークのディスアグリケーション
図表1 トランスポートネットワークのディスアグリケーション



また、マルチベンダーで構成されたトランスポートネットワークを、SDNコントローラーからオープンなインターフェースを介して制御できるようにすることで、IPパケット転送との統合制御や、コアネットワーク全体でのコスト最適化、運用効率化が図れるようにもなる。

月刊テレコミュニケーション2019年6月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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