所有から利用へ――。近年、ヒト・モノ・場所・乗り物・お金などあらゆるものが共有されるようになったが、モバイル業界でもシェアリングが広がろうとしている。
これまでも、一部領域で設備を共有する事例はあった。例えば、地下鉄などの収容スペースが不足しがちな空間においては、大手キャリアのメンバーなどが役員を務める社団法人 移動通信基盤整備協会が主導して漏洩同軸ケーブルや光伝送装置、アンテナなどを設置し共有していた。ただし、これはあくまで例外的なケース。ユーザーへの重要な訴求ポイントとなるエリア拡大のため、各キャリアは競争しながらインフラに投資してきた。
5Gはインフラコストがかさむしかし、これからは風向きが少し変わりそうだ。契機となるのは5Gである。今年4月に割り当てられた5G用周波数は、3.7GHz/4.5GHz帯とミリ波の28GHz帯。3Gや4G/LTE用に割り当てられている従来の周波数と比べると直進性が高く、障害物に弱い。そのためアンテナを多数設置してカバーしていく必要がある。
加えて、今後はルーラル地域への早期展開も必要になる。3Gや4G/LTEの時代は採算が取りづらいルーラル地域への整備は後回しにされがちだった。しかし、総務省は5G用周波数の割当において、地方にも早期に展開できるかを重視。2年以内に全都道府県でのサービス開始を求め、キャリア側も積極的に地方展開する計画を総務省に提出している。
逆に都心でも課題がある。スモールセル用のアンテナは通常、建物の屋上や中低層階の壁面に取り付ける。しかし、景観を損ねるという理由でビルの所有者から許可されないケースがあり、思うようにアンテナを設置できない。
こうした背景の中、各キャリアは投資負担を抑制しつつ迅速にサービスエリアを拡大する手法としてシェアリングに期待しているのである。
政府の動きも追い風だ。総務省は2018年12月、「移動通信分野におけるインフラシェアリングに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン案」を発表した。原則や関係法令の適用条件などを示し、鉄塔やアンテナ、基地局装置などの各領域でインフラシェアリングを促している(図表1)。
図表1 インフラシェアリングの概要(イメージ図)