2019年から2020年にかけて多くの国で商用化される5Gでは、現行4Gの20倍、20Gbpsの超高速データ通信が実現される。だが、モバイル通信の進化はこれで止まるわけではない。
世界中のネットワークベンダーや研究機関が、すでにその先の6G(Beyond 5G)を見据えて、さらなる高速・大容量伝送を可能にする無線技術の開発に挑んでいる。その先頭を走るのがNTTだ。
NTTは性格の異なる2つの技術分野で、世界に先駆けて無線による100Gbpsデータ伝送実験を成功させた。
1つは、OAM(Orbital Angular Momentum:起動角運動量)多重伝送技術を用いたもの。2018年5月、世界初となる100Gbps伝送実験(距離10m)に屋内(電波暗室)環境で成功したことが発表された。12月に開催された国際会議「IEEE GLOBECOM2018」では、信号処理の改良によって、さらに120Gbps伝送に成功したと報告されている。
屋内伝送実験の様子。10mの距離で120Gbpsのデータ伝送を実現した
同プロジェクトに携わるNTT未来ねっと研究所 ワイヤレスシステムイノベーション研究部 主任研究員の李斗煥氏は、「6Gでは1Tbpsを超えるデータ伝送が求められるが、実現の目途はすでについている」と語る。
(右から)NTT未来ねっと研究所 ワイヤレスシステムイノベーション研究部
グループリーダー 主幹研究員 清水敬司氏、
同研究部 主任研究員 李斗煥氏
100Gbps伝送を達成したもう1つの技術は、まだ利用技術が確立されていない300GHz以上の周波数資源の開拓を目指して開発が進められているもの。NTTは、東京工業大学と共同で行った実験で、300GHz帯での100Gbpsデータ伝送に成功したと2018年6月に発表した。
NTT先端集積デバイス研究所 光電子融合研究部 主幹研究員の野坂秀之氏は、この成果について「NTTが培ってきた超高速IC技術によって実現した」と説明する。
NTT先端集積デバイス研究所 光電子融合研究部 主幹研究員
高速アナログ回路研究グループ グループリーダー 野坂秀之氏
これらの技術はいずれも2030年代に登場する6Gへの導入を目指して開発が進められている。
では、こうした100Gbpsクラスの超高速・大容量無線通信は、どのように実現されているのか――。NTTが取り組んでいる2つの技術開発プロジェクトを軸に、6Gに向けた技術開発のトレンドを見ていこう。