エッジコンピューティングを実現するには「エッジ」と「クラウド」、そして現場の「デバイス/センサー類」をつなぐネットワークをどのように構築・運用するかが課題になる。
IoTの普及に伴い、IoTデバイスと、そのデータを利用するIoTアプリケーションの数は増え、それらとエッジをつなぐネットワークも複雑化していく。デバイスから生じる多種多様なデータを、エッジコンピューティングによる処理を経てクラウド上の適切なアプリに送り届けるためのネットワークをいかにシンプルに構築し、運用するのか。これは重要なポイントだ。
「SD-WANが備えるファンクションをそこに適用できると考えている」
そんなふうに、エッジコンピューティングを支えるネットワークの将来像を語るのは、SD-WANサービス「Master’sONE CloudWAN」(以下、CloudWAN)を提供するNTTPCコミュニケーションズで、サービスクリエーション本部長を務める三澤響氏だ。
現時点では、CloudWANはあくまで企業WANを最適化するためのサービスであり、エッジコンピューティング/IoT向けの機能は実装されていない。ただし、SD-WANが備えるトラフィック/経路制御機能や、物理回線を抽象化して仮想ネットワークを集中制御する仕組みは、エッジコンピューティングの運用にも大いに役立つと同氏は話す。
図表 エッジコンピューティングとSD-WAN
クラウドからエッジまで一括制御SD-WANをどう使うのか。
まず、拠点に置かれるSD-WANのCPE(宅内通信装置)は、その内部でアプリを稼働させるエッジ装置として用いることができる。
CloudWANのCPEは、いわゆるホワイトボックス型ハードウェアにNTTのグループ会社が独自開発したSD-WANソフトウェアを実装するかたちで作られている。コンテナ技術を採用しており、遠隔からアプリを配信・追加することが可能だ。
この仕組みを用いて、例えば、CPEに接続しているセンサーやデバイスからデータを収集してクラウドに送るログ収集用のアプリや、データ送受信を安全に行うセキュリティ機能をCPEに実装することができる。
そしてSD-WANには、CPEとクラウド、その間の仮想ネットワークをコントローラから一元管理する仕組みがすでに備わっている。三澤氏は「将来的にはCPEと、AWS/Azure等のクラウド、そして通信事業者やサービスプロバイダーがネットワークのエッジ側で運用するNFV基盤が連携する“複合体”でエッジコンピューティングやIoTが構成されていくだろう」と話すが、SD-WANはその全体をコントロールする基盤となり得るのだ。
厳密にいえば、SD-WANのコントローラが管理・制御する範囲は、CPEとその間の仮想ネットワークに留まる。ただし、APIを使ってクラウドサービスやNFV基盤と連携することは可能だ。また、クラウド/NFV基盤に仮想CPEを配置すれば、拠点側のCPEとの間の仮想ネットワークを直接制御できる。エッジとクラウドのアプリ間で分散処理を行うための仮想ネットワークを制御したり、あるいはセキュリティ対策のために、CPE側とNFV基盤のセキュリティ機能を連携させてサービスチェイニングを行うといったことも可能になる。