KDDIが海底ケーブル保守船「KDDIオーシャンリンク」を公開――依頼から24時間以内に緊急出航

KDDIは2010年9月24日、海底ケーブル敷設・修理船「KDDIオーシャンリンク」の記者見学会を開催した。同船はKDDIの100%子会社である国際ケーブル・シップ(KCS)が「KDDIパシフィックリンク」とともに保有するもので、パシフィックリンクは主に光海底ケーブルの敷設、オーシャンリンクは主に保守に携わっている。

オーシャンリンクは、アジア・太平洋の3つの保守ゾーンである「横浜ゾーン」「北アメリカゾーン」「SEAIOCMAゾーン」のうち、横浜ゾーンを担当している。北アメリカゾーンとは西経167度、SEAIOCMAゾーンとは北緯25度あたりで分けられている。

アジア・太平洋域の保守ゾーン。オーシャンリンクは「Yokohama Zone」を担当している

オーシャンリンクは「消防車」

オーシャンリンクのミッションは消防車に似ており、1年を通じて横浜港に待機し、横浜ゾーンのどこかで障害が発生すればコールがかかり、通常は24時間以内に出航する。ちなみに、横浜ゾーンにはKT Submarineの「SEGERO」とSBSSの「FU HAI」というケーブル船がそれぞれ韓国の釜山と中国の上海に配置されているが、この2隻は半年交代での待機であり、通年でスタンバイしているのはオーシャンリンクだけだ。ゾーンで常に待機するのは2隻だが、障害が重なって2隻では足りなくなった場合は隣接ゾーンに応援を頼める仕組みになっているという。

オーシャンリンクは、水深2500mまでの作業が可能な水中作業用ロボット「MARCAS-II」をはじめ、修理作業に必要な機材装置を具備しているほか、知識・経験豊富なケーブル技術者と接続技術者が乗船している。海底ケーブルは20年以上、海中に浸かっていなければならないので、それだけ信頼性の高い接続が求められている。このため接続技術者には「ユニバーサルジョイント」という世界的な資格取得が必要という。

保守船の義務。波浪・風波に抗して修理作業が実施できる船としての能力も必要(注:画面の水深2000mは2500mの誤り)

船舶維持費は協定参加16社で分担

保守費用だが、船舶を維持する経常費は、協定に参加しているKDDI、NTTコミュニケーションズ、ソフトバンクテレコム、KT、AT&Tなどケーブル所有事業者16社で負担する。そして修理は障害が発生したケーブルのオーナーが燃料費等の追加コストを実費で負担する。

海底ケーブルの修理の流れだが、障害が発生するとそのケーブルのオーナーから修理依頼が来る。依頼を受けたオーシャンリンクは予備ケーブルなどの修理用機材を積み込み、現場によっては作業の許認可を受けてから現場に向けて緊急出航する。現場海域に到着した後は24時間体制で修理を行う。

実際の修理は、例えばケーブルが物理的に切れていた場合、碇のようなケーブルの探線機をケーブルルートと直交する形で海底を引きずる。探り当てたケーブルは海中で切断し、一方のケーブルの端を船上に引き揚げる。船上に引き揚げたケーブルにはブイを付け、一旦海底に沈めて他方を探線する。引き揚げた他方のケーブルから障害部を取り除いた後、予備ケーブルを接続し、ブイに向かって敷設する。そして、ブイの付いたケーブルを再び引き揚げ、敷設した予備ケーブルと接続する。最後に両陸揚局間での試験を行って海底に沈める。

海底ケーブルのカットモデル。白い方は直径2.5cmの深海用のもの 病傷人の発生等緊急時に備え、ヘリデッキもある。訓練以外では13年前に一度だけ使用したという
操舵室(ブリッジ)。手前のレーダーは近距離用と長距離用の2つを備えている ケーブルコントロールルーム。ケーブルの張力や繰り出し長等を常に監視・コントロールしている
障害が発生して回収されたケーブル 光ファイバーの融着作業用機械
ケーブルの巻き上げや繰り出しを行うドラムケーブルエンジン。ドラムは直径3.6mもある 修理を終えた海底ケーブルを沈める水中作業用ロボット「MARCAS-II」。ラグビーボール状のものが浮きの役割となる

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