想像以上に大変な、現場とクラウドをつなぐ仕組み作り企業がデジタル経営を目指す中で欠かせないキーワードが、ビッグデータ解析やAIなどのアプリケーションを活用して価値を生み出す「クラウド」であり、現場のさまざまな機器をネットワークにつなぐ「IoT(Internet of Things)」だ。
だが、ここで1つ大きな疑問が浮上する。IoTで収集した現場のさまざまな情報をどうやってクラウドサービス上に上げていけばいいのか、クラウドとIoT、2つのキーワードをどのようにリンクさせるかということだ。京セラの通信機器事業本部 通信事業戦略部長、能原隆氏は、「IoTで収集した情報をクラウドに上げるのは、ことのほか大変な作業だ」と指摘する。
専門のIT部門や子会社を持ち、予算も潤沢な大手企業ならば、おそらく何らかのソリューションを選択できるだろう。だが、そこまで規模が大きくなく、専門的な知見も持たない普通の企業にとって、手元で稼働中の工作機械からデータを吸い出し、クラウドに持って行く仕組み作りは思った以上に高いハードルになっている。
長年にわたる通信機器事業のノウハウを生かした「IoTユニット」この「IoTのラストワンマイル」問題に対し、京セラは「コネクティング」というキーワードを提示し、現場で日々生成されるさまざまなデータと、クラウド上のインテリジェンスをつなげる役割を果たそうとしている。
それが可能なのは、約30年にわたって通信機器事業を展開してきた技術的蓄積があるからだ。5Gをはじめとする最新技術動向も含め、セルラー網や電波の特質を知り尽くしている上に、バッテリーやアンテナといった通信に必要なコンポーネントをコンパクトな1つのパッケージに組み込むノウハウも磨いてきた、国内では数少ないメーカーだ。
そうして長年蓄積してきた携帯電話やスマートフォンの開発・製造ノウハウを生かし、IoTという新しいビジネスフィールド向けに京セラが開発したのが、2017年8月に発表した「IoTユニット」だ。本体は手のひらに収まる小型サイズで、既存の工作機械やパレットなどにアタッチするだけでデータを吸い上げることができるなど、沢山の「仕掛け」が詰まっている。
「IoTというと、とかく大掛かりなシステムの導入が必要だというイメージがある。しかし、この小さなユニットをあちこちにバラまいて情報を取れば、それだけでIoTの第一歩を踏み出せる。中堅・中小企業がIoTの世界に踏み出す上で大きな壁になっていた、「コネクト」の問題を解消するというわけだ。
新たな産業の形を生み出すIoTを手軽に、確実につなげる京セラIoTユニットを発表してから約1年が経つが、その間、国内の多様な企業から大きな反響があった。京セラは既に、さまざまな企業と新しい使い方の検証を行い、新製品も開発中だ。特定の領域に限ることなく広くさまざまなパートナーを募り、ニーズに応じてつなげることに専念していくという。
とかく生産性向上という経営目線で語られがちなIoTだが、能原氏は、「我々はIoTを単なる経営ツールではなく、社会のあり方にもインパクトを及ぼすものに発展していかなければならない」と考えている。
それには一にも二にも、手軽に、確実に、安心して「つながる」環境が必要だ。「IoT/AIビジネスカンファレンス」ではそんなコネクティングテクノロジーの詳細が解説される予定だ。ぜひ期待していただきたい。
【A-5】10月31日(水)15:00-15:50
『多様なお客様を支える、手のひらサイズのセルラーIoT』
★お申し込みはこちら→ http://www.ric.co.jp/expo/iotb2018/