<特集>NETWORK SHIFT ~DX時代の新しいネットワーク戦略とは?SD-WANの現在地と課題――グローバル企業はこう使っている

企業WANの未来は、どこに向かうのか。その有力な針路の1つがSD-WANだ。4月末に開催されたイベント「SD-WAN座談会」では、SD-WANの活用法、課題についてSD-WAN事業者たちが語り合った。

拠点間の連携やクラウド利用の基盤となるWAN。その柔軟性と拡張性を飛躍的に高め、「クラウド時代の企業ネットワーク」を実現するソリューションの1つとして期待されているのがSD-WANだ。

「注目度は高く、お客さまからの引き合いも多い」と語るのはNTTデータのネットワークソリューション事業部に所属する前田慶一氏。グローバル企業のネットワーク構築に携わり、2015年から様々なSD-WAN製品を調査・評価してきたという同氏は、「メジャーなテクノロジーとしての位置を確立している」とSD-WANの現在地を表現する。

NTTデータ ネットワークソリューション事業部 前田慶一氏
NTTデータ ネットワークソリューション事業部 前田慶一氏

では、ユーザー企業はSD-WANのどこを評価しているのか。前田氏が挙げたポイントが、次の3つだ。

第1は、ポリシーベースのトラフィックコントロールだ。企業ネットワークを流れる様々なトラフィックを、ルールに従って指定のルートに振り分ける機能である。加えて、トラフィックの可視化機能を評価するユーザーも多いという。

第2は、複数拠点のポリシーを一元管理できる点だ。特にグローバルネットワークを運用する企業が、セキュリティ機能も含めて遠隔から拠点のポリシーを管理できることに注目している。

そして、ゼロタッチプロビジョニング(ZTP)の評価も高い。これは、拠点に設置するCPE(宅内通信装置)をインターネットにつなぐだけで、自動的に設定を行う機能だ。各拠点にIT技術者を派遣しなくても、現地の社員が指定のポートにケーブルを挿すだけで初期設定が完了する。

このZTPは、初期導入時の設定作業を簡便化する点で注目されがちだが、実際には「故障時のリカバリー対応の点でも評価されている」と前田氏。IT技術者がいない拠点にCPEの予備機を置いておけば、故障時に差し替えるだけでリカバリーできる。

日本から海外拠点を可視化こうした点を評価してSD-WANを導入したのが、良品計画だ。

海外にも多くの拠点を持つ同社は「現地のネットワーク構成が日本から把握しづらくなっていた」(前田氏)。そこで「日本側から拠点・ネットワーク構成を可視化してマネジメントやサポートが行える環境を作る」ために、NTTデータはシスコシステムズの「Cisco Meraki SD-WAN」を提案。長期間故障が何度か発生していたドイツでまず導入し、各店舗に予備機も備えることで故障時にも即座に回復できるようにした。

幸いなことに導入後これまで故障は発生していないため、リカバリーの効果はまだ実証されていないが、リモートからセキュリティポリシーを管理できる点が高い評価を得ているそうだ。今後、各国に展開する予定だという。

月刊テレコミュニケーション2018年7月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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