ゼンリンは日本全国100%の地図を保有する。また、東京電力は約5万基の送電鉄塔、長さ約1万5000kmの送電線、約590万基の配電柱、長さ約33万8000kmの配電線を保有している。この電力ネットワークを「空から見える道しるべ」に、ドローンが安全に飛行できるルートを作ろうというのが「ドローンハイウェイ構想」だ。
ドローンハイウェイ構想
ゼンリンと東電は、ドローンハイウェイのため、①インフラ情報の3次元地図化、②3次元地図からの安全なルート生成、③送電鉄塔に沿ったジオフェンスの実装、④気象観測機器の設置、⑤気象状況データの解析などの技術・インフラ要素の確立を進めてきた。
この構想に、自律航行型ドローンによる配送サービスに取り組む楽天が参画し、埼玉県秩父市で今年6月、東電の送電鉄塔上空に設定した空域で荷物配送実験を行い、成功した。
今回の成功を踏まえて3社は今後、ドローンハイウェイの「テストコース」を開通し、関東を中心に複数エリアでさらに実験を進める計画だ。安全飛行インフラ構築の加速と、ドローン物流の推進を図り、2020年度以降の実用化を図りたいという。
今後の技術的課題として、⑥ダイナミックな気象情報を加味したルート生成、⑦インフラ要素による機体制御、⑧管制システムへの情報提供機能などを検討していくとしている。
ドローンハイウェイ構想の今後の展開
楽天 常務執行役員の安藤公二氏は、「ドローン制御はGPSと920MHz帯を利用しているが、いずれLTEの活用も検討している」と述べた。また、東京電力ベンチャーズ 代表取締役社長の赤塚新司社長は「スムーズな運行のためには多数の実験データを蓄積し、それをベースにしたAI活用が必須であると考えている」と話した。
さらに安藤氏は、「ドローンの荷物配送は社会の高齢化、ドライバー不足などからもますます必要とされている。特に都市部でのラストワンマイルでの成功が実用化へのポイントと見ている」と語った。