今や誰もが日常的に利用している無線LAN(Wi-Fi)。Wi-Fi Allianceでマーケティング担当バイスプレジデントを務めるケビン・ロビンソン氏によれば、「実際に利用されているアクティブなデバイスは世界で90億台」にも及ぶという。さらに「この1年だけでも、30億のWi-Fiデバイスが新たに出荷されている。世界の通信トラフィックの半分はWi-Fiに関するものだ」。
Wi-Fi Alliance マーケティング担当バイスプレジデント ケビン・ロビンソン氏
そんなWi-Fiのセキュリティをより強固にする新たな標準規格が登場した。Wi-Fi Allianceが新たに立ち上げた認証プログラム「Wi-Fi SERTIFIED WPA3」(以下、WPA3)と「Wi-Fi SERTIFIED Easy Connect」(以下、Easy Connect)だ。
WPA3は、これまで約10年使われてきた暗号化規格「WPA2」の後継に当たるもの。Wi-Fiセキュリティの簡素化と強固な暗号化を実現するものだという。
WPA3の概要
具体的には、Wi-Fi接続を行う際のパスワード認証を強固にする新たな仕組みを導入することで悪意のある第三者によるハッキングを防ぐ。ハッカーはオンライン辞書攻撃と呼ばれる手法によってユーザーのパスワードを推測するが、WPA3で新たに採用したプロトコルでは、このパスワード推測が非常に困難になるという。
ロビンソン氏によれば、「推奨される複雑性を満たさないパスワードであっても保護することが可能」だ。さらに、仮にパスワードが漏洩した場合でもWPA3では新たな認証・接続の手順を行うため、「将来的な秘匿性も担保される」とした。なお、ユーザーがWi-Fiに接続する際の方法はWPA2を利用していた「従来とまったく変化はない」。
この新規格は、家庭等で利用される個人向けデバイス用の「WPA3-Personal」と、企業向けの「WPA3-Enterprise」の2つのモードが用意されている。
WPA3では、PersonalとEnterpriseの2つのモードが用意されている
後者のWPA3-Enterpriseでは「企業や組織等がWi-Fiデバイスを一元的に管理する」ことが可能だ。さらに、暗号強度も従来の128ビットから192ビットに向上させている。なお、既存のWPA2との互換性を維持するため「移行モード」も用意。例えば、WPA3対応の無線LANアクセスポイントにWPA2対応デバイスが接続した場合でも暗号化通信を利用できる。
Wi-FiデバイスをWPA3に対応させるには「概ねソフトウェアのアップデートで可能」とロビンソン氏は語ったが、192ビット暗号等の一部機能についてはハードウェア性能に依存する部分もあり、「いつごろ対応するかはメーカーの判断による」とも話した。Wi-Fi Allianceとしては「2019年の後半ごろから、かなりの数のデバイスがWPA3に対応し、WPA2からの移行が進んでいくと考えている」ようだ。