電話局の局舎(通信ビル)をエッジコンピューティングの拠点として活用してもらう――。こうした取り組みにNTT東日本が力を入れている。
デバイスの近くに配置したエッジサーバーにデータ処理の一部を委ねることで、低遅延化や通信量の削減を可能にするエッジコンピューティングは、映像解析を活用したアプリケーションや自動運転/遠隔制御などの実現手段として最近脚光を浴びている。ほぼすべての市区町村に設置され、耐震性にも優れる通信ビルは、エッジサーバーの設置場所としては理想的だ。
実は、NTT東日本の設備は、すでにエッジコンピューティングに活用されている。同社ビジネスイノベーション本部でSIerやサービス事業者などのビジネスユーザー(ミドルBユーザー)向けソリューションを担当する長谷部豊プロダクト戦略担当部長はこう説明する。
「当社のデータセンターは、営業エリアの17都道県すべてに1カ所以上配置されている。各地域にあることから、自治体や地域のSIerなどに多く活用されてきたが、IoTの時代を迎え、映像や画像、音声などの非構造化データの一次処理を当社のデータセンターで行い、処理済みのデータだけをクラウドに上げるという使われ方が多くなってきた」
この延長線上に出てきたのが、通信ビルのエッジコンピューティングでの活用だ。
「さらに自社の拠点から近い通信ビルを使いたいという要望がお客様から出てきており、実証実験で効果の検証を進めている」と長谷部氏は語る。NTT東日本は以前から通信ビルの空きスペースを、サーバーの設置場所として自治体などに個別に貸し出してきた。その新たなニーズとして、エッジコンピューティングでの利用が立ち上がり始めたのだ。
図表1 NTT東日本が検討しているエッジコンピューティングソリューションのイメージ
「通信ビルには、当社の通信設備等を設置しており、活用が困難なビルもある。しかし、それ以外の通信ビルにおいてはエッジコンピューティング用途で、空きスペースを使っていただけるのではないか」
同社ネットワーク事業推進本部で設備計画部門長、クラウドネットワーク推進PT長を務める石田信吾氏はこう期待を寄せる。